<知っておきたい>「結膜炎」の正しい知識 「結膜炎」の原因・症状・対処法
白眼が赤く充血して眼科に駆け込んだ…。このような経験がある人は多いでしょう。結膜炎というと「子供の病気である」「感染しやすい」と思いがちですが、いくつかの種類があります。原因や症状、対処法はさまざま。ここでは代表的な結膜炎について眼科医監修のもと解説します。
結膜炎とは
結膜炎とは、白目とまぶたの裏側を覆っている半透明な膜(結膜)が、さまざまな刺激や微生物感染などにより炎症を起こした状態です。症状は発症原因によってもさまざま。結膜の充血、目やにがたくさん出る、まぶたの腫れ、かゆみなどがあらわれます。
結膜炎の仕組み
結膜は、細菌、ウイルスなどが目の中に侵入するのを防ぐ役割を担っています。結膜炎になると目が充血したり、目やにが出たりするのは、結膜が異物を排除しようとする防御反応です。結膜の上皮細胞(上皮組織を形成する細胞)が正常であれば、細菌やウイルスなどが触れた程度では炎症は起こりませんが、ドライアイだったり、目を強くこすったりして結膜の上皮細胞に傷があると、そこに細菌やウイルスなどが張り付き、炎症を起こしてしまいます。
結膜炎の主な種類/原因/症状
結膜炎は、主に「アレルギー性結膜炎」「細菌性結膜炎」「ウイルス性結膜炎」の3つに分けられます。それぞれの原因・症状についてみていきましょう。
アレルギー性結膜炎
花粉やハウスダストなどのアレルゲン(アレルギー反応を引き起こす物質)が目に感作※1することで起こります。症状はかゆみ、結膜の充血、涙、目やになどですが、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの鼻症状を伴うことも。春や秋などの決まった季節に起こる「季節性アレルギー性結膜炎(主に花粉が原因)」と、季節を問わず起こる「通年性アレルギー性結膜炎(主にハウスダストが原因)」があります。
※1 感作:アレルゲンに対して免疫が働き、アレルギー反応を起こす体質になってしまうこと
細菌性結膜炎
細菌が目に感染することで起こります。原因となる細菌は多岐に渡り、涙で洗い流せる弱い菌もあれば黄色ブドウ球菌など重症化しやすい菌もあります。症状は白目の充血や浮腫、黄ばんだ目やになどです。
また、性感染症の一種で、クラミジア・トラコマティスという細菌に感染している人の体液が目に触れることで感染する「クラミジア結膜炎」も含まれます。
ウイルス性結膜炎
ウイルスに感染することで発症します。症状はウイルスによって異なりますので、詳しく見ていきましょう。
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流行性角結膜炎(はやり目)
アデノウイルス(8型、19型、37型など)が目に感染することで起こります。感染力が強いことから、「はやり目」とも呼ばれます。目の充血、目やに、涙、眼痛、リンパの腫れなどの症状があらわれます。
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咽頭結膜炎(プール熱)
アデノウイルス(3型など)が目に感染することで起こります。プールを介して子供に流行することが多いため、「プール熱」とも呼ばれます。目の充血、目やにといった目の症状は「流行性結膜炎」より弱く、のどの痛みや発熱(39度前後)などの症状がみられます。
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急性出血性結膜炎
主にエンテロウイルス70とコクサッキーウイルスA24変異株が目に感染することで起こります。症状は急性で、充血、目やに、ゴロゴロ感などがあらわれ、よく白目に出血がみられます。かつては世界中で流行しましたが、近年、日本では沖縄県を除き、大きな流行は起きていません。
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ヘルペス性結膜炎
単純ヘルペスウイルスが目に感染することで起こります。症状からはアデノウイルスによる結膜炎(ウイルス性結膜炎、咽頭結膜炎)と区別できません。角膜上に典型的な樹枝状病変を作るのが特徴です。両目が侵されることは少なく、目の周りの皮膚に小さな水泡がみられることがあります。
<タイプ別>結膜炎の予防法・対処法
結膜炎の最大の予防法は原因となるアレルゲンや細菌、ウイルスなどを目に入れないこと。具体的な予防法やかかってしまった時の対処法について結膜炎の種類別に解説します。
アレルギー性結膜炎の予防法・対処法
かゆみや充血などの不快な症状はなるべく回避したいものです。予防やセルフケアについて解説します。
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目薬を使う
アレルギー性結膜炎はOTC医薬品※2で対応できます。抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤配合の目薬が効果的です。
※2 薬局やドラッグストアで処方箋なしで購入できる医薬品
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花粉に触れない
花粉が飛散する時期は、出来るだけ角膜や鼻粘膜が花粉に触れないようにします。花粉が多い時は外出を控えたり、外出時にゴーグル型のめがねや花粉防止用のマスクを装着したりするといいでしょう。
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ダニを除去する
吸引力の高い掃除機でゆっくり丁寧に掃除機をかける、布団は天日干し後や布団乾燥機後に掃除機をかける、空気清浄機を使用するなどして、ダニの死骸やフンを除去しましょう。また、室温を20度以下、湿度を50%に保ち、通気をよくするとダニの増殖が抑えられます※。空気清浄機を使うのも有効です。
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カビを除去する
夏は除湿を心がけ、湿度を70%以下に保つとカビの増殖が抑えられます※。冬は窓ガラスやサッシの結露がカビの原因になるので、まめに拭いたり、断熱材などを使用したりして結露を防ぎましょう。
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水道水での洗眼は避ける
目に入った花粉やハウスダストなどを洗いたい場合、水道水だと涙を洗い流してしまい、角膜を傷つける恐れがあります。防腐剤無添加の人工涙液を利用するといいでしょう。
※参照:日本眼科学会「アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第2版)」
細菌性結膜炎の予防法・対処法
目に細菌が感染することによって起こる細菌性結膜炎。特に、免疫機能が低下している人は注意が必要です。
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こまめに手を洗う
細菌性結膜炎は手指を介して感染するのでこまめに手を洗い、汚れた手で目を触らないようにすることが大切です。コンタクトレンズをつけるときや外すときは必ず手を洗いましょう。
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目薬を使う
細菌性結膜炎はOTC医薬品※2で対応できます。抗菌剤配合の目薬を3~4日使用して、改善がみられない場合は眼科を受診しましょう。
※2 薬局やドラッグストアで処方箋なしで購入できる医薬品
ウイルス性結膜炎の予防法・対処法
感染力が非常に強いものもあるので、自分がかからないようにするだけでなく、人に移さないことも大切です。
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手をよく洗い、目をこすらない
涙や目やには多くのウイルスが存在します。ウイルス性結膜炎の多くは、感染した人が目をこすった手指を介して感染します。予防のためにも、人に感染させないためにも、まず手を流水と石けんでよく洗うことと、目をこすらないことが大切です。
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プールではゴーグルを使用
咽頭結膜炎(プール熱)は、感染している人の目やにや鼻水、便などに含まれるウイルスがプールの水を介して体内に侵入することでも感染します。かつてはプール後の洗眼が推奨されていましたが、水道水で目を洗うと涙が洗い流されて角膜が傷つきやすくなるので洗眼は避けましょう。現在ではゴーグルを使用することが推奨されています。
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眼科を受診する
流行性角結膜炎(はやり目)や咽頭結膜炎(プール熱)に対応する目薬はありません。すぐに眼科を受診しましょう。眼科では通常、炎症を抑え、細菌による二次感染を防止するための目薬が処方されます。
また乳幼児の場合、流行性角結膜炎による角膜炎が重症化すると、症状が改善しても角膜に濁りが残り弱視になることがあるので、完治するまで通院することが大切です。
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周囲への感染を防ぐ
流行性角結膜炎(はやり目)や咽頭結膜炎(プール熱)は感染力が強いため、学校保険法で第3種学校伝染病に指定されています。
- ■自宅療養
- 1週間~10日間は感染の恐れがあるため、自宅療養をします。学校、幼稚園、保育園は医師の許可が出てから行きます。大人の場合も仕事を休んだ方がいいでしょう。特に、接客業や飲食業では他の人に感染する可能性が高いので注意が必要です。
- ■家族間での感染を防ぐ
- よく手を洗う、目をこすらない、タオルや目薬などを供用しない、などを心がけましょう。家族に感染している人がいるときはタオルではなくペーパータオルを使うのもおすすめです。感染した人が触ったものはアルコールで拭くといいでしょう。また、お湯を介して感染する可能性もあるので、感染している人はお風呂は最後に。その後、浴槽や蛇口などを十分に洗浄します。
結膜炎とコンタクトレンズの関係
コンタクトレンズの汚れには化粧品、ほこり、タバコの煙など外からの要因と、涙の中のタンパク質や脂質の成分など内からの要因があります。アレルギー性結膜炎の症状が強い人は内的要因である分泌物が多く、レンズが汚れやすくなります。
また、コンタクトレンズの素材やコンタクトレンズに付着したタンパク質などの汚れに対して、アレルギー反応を起こしている場合もあります。目やにが出ているときは、通常はコンタクトレンズは休んだ方がいいでしょう。使用し続ける事により、重症化する危険性があります。
結膜炎による怖い合併症
結膜炎にかかると、結膜の上皮細胞に傷がつくため、結膜炎の原因とは異なる種類のウイルスや細菌が侵入しやすくなります。
ウイルス性結膜炎で結膜が弱っているところに細菌が感染すると、細菌の種類によっては重症化することがあります。こういった状態を「混合感染」といいます。また、アデノウイルスによる結膜炎の後遺症として角膜炎が続くと視力が低下することも。結膜炎は放置しないこと、また、きちんと完治させることが大切です。
子ども・高齢者の結膜炎対処法・予防法
健康で免疫機能が正常に機能しているときは、たとえ目にウイルスに触れても感染することはありません。しかし、免疫機能が未熟な子供や、免疫機能が低下している高齢者、病中病後の人などは感染しやすいので注意が必要です。
手洗いを徹底し、食事や睡眠に気をつける、過労を防ぐなどして免疫機能を低下させないようにしましょう。また、ドライアイや結膜炎で角膜や結膜に傷がついていると細菌に感染しやすくなるので、これらを放置しないことも大切です。
監修:梶田眼科 院長 梶田雅義先生
1983年、福島県立医科大学卒業後、カリフォルニア大学バークレー校研究員などを経て、2003年、梶田眼科開業。2018年から2021年、東京医科歯科大学医学部臨床教授。2022年、日本コンタクトレンズ学会名誉会員受賞、2023年、日本眼光学学会名誉会員受賞。現在も日本眼鏡学会評議員、日医光JIS原案作成委員を務める。