「目のケガ(外傷)」と対処法

日常生活で起こりやすい「目のケガ(外傷)」と対処法

皮膚や髪の毛で覆われていない目は、外からの刺激を直接受けやすい器官です。眼科医監修のもと、日常生活の中で目を傷つけやすいシーンやケガの種類、その対処法について解説します。

目のケガ(外傷)をしたときの基本的な対処法

目のケガ(外傷)をしたときの基本的な対処法

目のケガでは、表面の症状は軽くても内部が傷ついている可能性もあります。「見る」という大切な機能を守るために、必ず眼科を受診することが大切です。

応急処置の基本

打撲したとき…濡らしたタオルなどでまぶたの上から冷やす。
異物が目に入ったとき…手で触れない、押さえない、こすらない。水で洗い流す。

眼科を受診する際に役立つ情報

受診時に医師に説明できるよう、以下の点をメモしておきましょう。洗剤や薬品などが目に入った場合は、できればその容器を診察時に持参してください。

  • ケガの原因
  • ケガをした状況
  • 日時
  • 眼鏡やコンタクトレンズの装着の有無
  • 受診するまでに行った対処
  • 受診までの症状の変化
目のケガ(外傷)をしやすいスポーツとケガの種類

目のケガ(外傷)をしやすいスポーツとケガの種類

球技や格闘技などは、眼球打撲(がんきゅうだぼく)が起こりやすいスポーツです。網膜振盪症(もうまくしんとうしょう)、結膜下出血(けつまくかしゅっけつ)、虹彩炎(こうさいえん)や前房出血(ぜんぼうしゅっけつ)が起こることも多くあります。急な視力低下や痛みがある場合は、すぐに眼科を受診してください。目のかすみや充血、出血、見づらいなどの症状がある場合も、早めの受診をおすすめします。

格闘技、ボクシング、野球、バスケットボール、ラグビー

眼窩壁骨折(がんかへきこっせつ)が多く起こります。痛みや腫れ、上を向くとものが二重に見える(複視)、眼球が上を向いたままになってしまうといった症状が生じます。できるだけ早く、病院を受診し、MRIやCT検査を受けて、下壁骨折が発見されたら、できるだけ早く手術を受けることが大切です。長時間、骨折片に挟まれた筋肉は壊死することがあり、筋肉が壊死に陥る前に手術を受ければ、症状は改善します。

ゴルフ、バドミントン

小さいボールやシャトルなどが当たることで、眼球破裂(がんきゅうはれつ)が起こることがあります。受傷直後から痛みと視力低下があります。

サッカー

大きなボールが当たることで黄斑円孔(おうはんえんこう)を生じることがあります。たいていの場合、硝子体出血(しょうしたいしゅっけつ)などの眼底出血(がんていしゅっけつ)を伴い、受傷直後から視力低下が起こります。

解説
  • 眼球打撲

    目や目の周囲の打撲。

  • 網膜振盪症

    網膜が白濁している状態。

  • 結膜下出血

    白目を覆う結膜の血管が切れ、結膜の下に少量の血がたまった状態。

  • 虹彩炎

    虹彩に起こった炎症。

  • 前房出血

    虹彩の一部が切れ、前房という眼球の前側の空間に血が流れ出ている状態。

  • 眼窩壁骨折

    眼窩(目のくぼみ)の骨の骨折。下部の骨が折れる眼窩底骨折(吹き抜け骨折)が多く起こる。

  • 眼球破裂

    眼球を覆っている強膜が破裂した状態。

  • 黄斑円孔

    黄斑という網膜の中心部分に穴が開いてしまう病気。視力が0.1以下にまで下がることもある。

  • 硝子体出血

    網膜などの血管が破れて、眼球の内部を満たす組織(硝子体)に血が流入した状態。

  • 眼底出血

    網膜の血管が破裂して起こる出血の総称。

紫外線による目のケガ(外傷)

紫外線による目のケガ(外傷)

直接打撲したり異物が入ったりしなくても、目のケガが起こるケースがあります。代表的なのは紫外線による目の炎症です。

スキー場、海水浴場、高山

強い紫外線に長時間さらされると、角膜の表面(角膜上皮)に炎症が起こります。これを雪眼炎(せつがんえん)や雪目(ゆきめ)といい、重症の場合は角膜びらんを生じます。また、電気溶接や殺菌灯などが原因で起こった場合は、電気性眼炎(でんきせいがんえん)と呼びます。
主な症状は強い目の表面の痛みと、朝もやの中で見ているような霧視(むし)です。充血、目がごろごろする、涙が止まらないなどの症状も起こります。多くの場合、紫外線を浴びて8時間ほど経ってから症状が出ます。目を冷やすことで痛みはやわらぎますが、翌日まで症状が続くなら眼科を受診しましょう。

解説
  • 雪眼炎、雪目、電気性眼炎

    紫外線により、角膜上皮が傷ついて起こる炎症。

  • 角膜びらん

    角膜上皮に傷がついて一部がはがれている状態。

日常生活で不意に起こる目のケガ(外傷)

日常生活で不意に起こる目のケガ(外傷)

“目に小さなゴミが入る”というのは日常的によくあることですが、間違った対処をするとゴミが目の奥に入り込んだり、眼球を傷つけたりする原因になることも。「ちょっとくらい大丈夫だろう」と自己判断をせず、違和感があればすぐに眼科を受診してください。

異物が入った場合

  • ホコリ、砂、まつ毛、まつ毛エクステ、虫など

    静かにまばたきをして涙と一緒に流します。流れない場合は洗面器などに張った水に目をつけてまばたきしてみてください。それでもとれない場合、また目の奥にゴミが入ってしまった場合は、眼科を受診します。

以下のものが目に入ったときは、必ず眼科の受診が必要です。

  • 洗剤、漂白剤、ヘアカラー剤、接着剤など

    液体や粉末の化学物質が目に入ったときは、すぐに目を洗い流します。水の中で目を開けて洗い流す、あるいは蛇口から直接目に水をかけるなどを10分以上続け、その後は速やかに眼科を受診します。

  • 鉄粉、鉄片(特に要注意)

    鉄片が角膜に刺さるとしばらくは痛みとゴロゴロ感がありますが、少し時間が経つと治まります。しかしこれを放置すると、鉄が錆び、角膜にも錆が生じてきて、再び痛みを感じるようになります。
    鉄片の錆は角膜の組織を溶かすので、角膜に穴が開いて失明する危険性もあります。そうなる前にできるだけ早く眼科を受診し、除去してもらいましょう。

とがったものが刺さった場合

  • 小さなゴミなど

    目の表面に小さなゴミなどが刺さったときは、決してこすらず、軽く水で洗い流して眼科を受診します。こすると角膜上皮剥離(かくまくじょうひはくり)が起こったり、さらに深く刺さったりする危険があります。

以下のものが刺さったときは、自分で応急処置をしようとせず眼科を受診してください。

  • 植物のトゲ、毛虫の毛

    逆戻りしない構造になっているので、触るたびにどんどん深く刺さります。毒素を含んでいることもあるので、目に触れずに専門医に抜去してもらいましょう。

  • 枯れ草や枯れ枝

    傷口は軽症でも、カビが付着している可能性があります。しばらくしてから難治性の角膜潰瘍(かくまくかいよう)が起こる危険があります。できるだけ早く眼科を受診しましょう。

  • 鉛筆、ボールペン、箸など

    絶対に引き抜こうとせず、すぐに眼科を受診します。異物が刺さると角膜穿孔(かくまくせんこう)が起こり、眼球を圧迫することで外傷性白内障になりかねません。出血や「熱い涙が出ている」と感じるときは目を圧迫しないよう注意が必要です。

  • つりばり

    かえしがあるため一度刺さると簡単には抜けません。深く刺されば、水晶体を傷つけ、白内障を生じます。無理に抜こうとせず、すぐに眼科を受診しましょう。

解説
  • 角膜上皮剥離

    角膜上皮が傷ついてめくれた状態。

  • 角膜潰瘍

    角膜の表面がただれて、その影響が角膜の深部に及んでいる状態。

  • 角膜穿孔

    角膜に穴が開いている状態。

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梶田 雅義先生
監修:梶田眼科 院長 梶田雅義先生
1983年、福島県立医科大学卒業後、カリフォルニア大学バークレー校研究員などを経て、2003年、梶田眼科開業。2018年から2021年、東京医科歯科大学医学部臨床教授。2022年、日本コンタクトレンズ学会名誉会員受賞、2023年、日本眼光学学会名誉会員受賞。現在も日本眼鏡学会評議員、日医光JIS原案作成委員を務める。

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