近視進行抑制に期待の成分クロセチン 近視進行抑制に期待の成分クロセチン

近視の進行と抑制にかかわる、遺伝子に注目 近視の進行と抑制にかかわる、遺伝子に注目

近視と関連があると考えられている遺伝子はいくつかあります。そのなかでも、EGR1という遺伝子は、近視進行をおさえる働きを持つといわれています。

そして、EGR1遺伝子を活性化するものにクロセチンという成分があります。
慶應義塾大学医学部 眼科学教室の近視研究チームが、「EGR1を活性化する食品成分」を探したところ、「クロセチン」が群を抜いてEGR1遺伝子を活性化させることがわかりました。

クロセチンは近視進行を抑える遺伝子の働きを活性化 クロセチンは近視進行を抑える遺伝子の働きを活性化

EGR1を活性化する食品成分、クロセチン EGR1を活性化する食品成分、クロセチン

ヒト由来の細胞に、数百種類の目によいといわれる食品成分を添加したときのEGR1の発現量を、何も投与していないときを1として比較しました。
ほかの成分に比べて、クロセチンは非常に高いEGR1活性を認めました。

データ:Mori K, Kurihara T et al.(2019)

クロセチンとは?

クロセチンは、クチナシの果実やサフランに含まれる黄色の天然色素です。いくつかの生薬にも含まれ、古くから人々の健康に役立ってきました。

クチナシの実 クチナシの実

クロセチンはカロテノイドの一種で、ニンジンに含まれている「β-カロテン」の仲間です。
強力な抗酸化作用があり、一般的なカロテノイドと比べて分子量が小さいことから吸収されやすいという特長があります。
また、クロセチンはクチナシの実7.5kgに対して、わずか10gしか抽出することができない貴重な成分でもあります。

たとえば、こんな食品にクロセチンが含まれている たとえば、こんな食品にクロセチンが含まれている

クロセチンが含まれているクチナシの実やサフランは、実は身近な食べ物に使われています。
クチナシの実は栗の甘露煮や栗きんとん、たくわんの色付けに、サフランはパエリアやサフランライスの香り付け・色付けに使われているんですよ。

栗の甘露煮 1個(20g)あたり:クロセチン 0.028mg 栗の甘露煮 1個(20g)あたり:クロセチン 0.028mg

データ:食品衛生学雑誌, 37(6), 372~377(1996).

クロセチンの働き

・近視の進行抑制。・目の疲労回復促進。・シミ・くすみの改善。・睡眠の質を高める。 ・近視の進行抑制。・目の疲労回復促進。・シミ・くすみの改善。・睡眠の質を高める。

クロセチンは近視進行抑制効果だけでなく、目の疲労回復促進や睡眠の質の向上、シミやくすみの改善に役立つことが知られています。
目の中にあるピントを調節する筋肉である毛様体は、パソコンなど、近くを見る作業で緊張状態(収縮)になり、作業を終えて遠くを見ると緊張状態から解放(弛緩)されます。
目の疲労は、ピントを合わせるための調整機能が低下し、近くを見る時に毛様体が過度に緊張する調節緊張が起こることで引き起こされます。
クロセチンの摂取により、目の疲労回復促進効果があることが分かりました。
また、疲れ目の解消には睡眠の質を高めることも重要です。
クロセチンは睡眠の質を高めることで自律神経のバランスを整えることで、目の調節機能を改善していることが考えられています。
さらに、強い抗酸化作用を持つため、細胞の老化を防ぎ、肌のターンオーバーを促進し、肌の明るさや弾力を保つ働きがあるので、シミ・くすみの改善に役立つとも言われています。
このように、クロセチンを含む食品やサプリメントを取り入れることで、健康と美容の両面での効果が期待されます。

クロセチンの近視進行抑制効果

慶應義塾大学と大阪大学、ロート製薬の研究グループは、クチナシ由来の色素成分「クロセチン」が小児の眼軸長伸長・屈折度数の近視化を有意に抑制することを確認しました。

クロセチンのはたらき

眼軸長変化、屈折(等価球面度数)変化、脈絡膜厚の変化 眼軸長変化、屈折(等価球面度数)変化、脈絡膜厚の変化

6歳~12歳の弱度近視から中等度近視( -1.5D~-4.5D )の小学生の男女69人を対象に試験を行い、クロセチン7.5mgを含むソフトカプセルを1日1回、24週間服用してもらうランダム化比較試験を行いました。
クロセチンを24週間服用した群は、クロセチンの入っていないプラセボを服用した群に比べ、眼軸長の伸長が14%抑制されていました。
また、屈折の近視化についても20%抑制されていました。
また、近視が強くなると、網膜の外側にある「脈絡膜(みゃくらくまく)」という血管の豊富な膜が薄くなることが知られています。
プラセボを摂取した群では脈絡膜の厚みが薄くなっていたのに対し、クロセチンを服用した群では有意に厚くなっていることも分かりました。
以上のことから、クロセチンの服用により近視進行を有意に抑制する効果があることが確認されました。

データ:Mori K, Torii H, Fujimoto S, et al.(2019)

気になることがあれば眼科を受診しましょう 気になることがあれば眼科を受診しましょう

たいせつな子どもの目。
からだも目も成長する学童期は、定期的な検査を受け、
適切な指導を受けることが大切。
目について気になることがあれば、眼科医に相談しましょう。

監修

慶應義塾大学医学部 眼科学教室
麹町大通り眼科
森 紀和子 先生