あの人の、
心のしずめ方
村井理子さんの場合

せわしない毎日の中では、良い方向にも悪い方向にも心が揺れ動く瞬間に直面します。心がさわがしくて落ち着かない時、どんなふうに自分に向き合えばいいのでしょうか。琵琶湖のほとりでご家族と暮らしながら、翻訳家、エッセイストとして活躍を続ける村井理子さんは、愛犬と穏やかに過ごすことや自分の世界に没頭する時間をつくることで、心の状態を健やかに保っているのだそう。日頃の暮らしに取り入れている“心のしずめ方”について伺いました。

「あの人の、心のしずめ方」は、各界の第一線で活躍する女性たちに、自分なりに培ってきた心のしずめ方についてインタビューをしていく連載企画です。

ひとりと一匹で過ごす時間が、
心をしんとしずめてくれる。

暮らしの中でもっとも心がしずまるのは、愛犬のラブラドールレトリバー・ハリーと過ごす時間です。普段は2人の息子と夫と暮らしていますが、家族が学校や仕事に出かける平日の昼間は、家の中には私とハリーだけになることが多くて。いつもは家の中が賑やかな分、一人と一匹だけの“しゃべらない時間”に心地良さを感じます。

ただ隣り合ってぼーっと座っているだけでも十分ですが、春先や秋口などの気持ちのいい季節に、自宅の2階にある琵琶湖に面した部屋でともに過ごす時間が特に好きですね。窓を開け、山から湖へ吹き抜ける風を感じながらソファに横になると、ハリーは必ず私の膝の上へ。体格の大きい犬なので、大体の場合は体が押しつぶされるような状態になるんですが(笑)、身動きが取れない状態で本を読んだり、テレビを観たりするのが良いリラックスになっています。

また、日課の散歩も私にとっては大切な時間です。ハリーは水遊びが好きなので、湖まで出て、泳がせて、帰ってくるのがお決まりのコース。歩くことで頭の中の整理ができたり、原稿が煮詰まっている時でも気持ちの切り替えができたりと、様々な効用がありますが、それだけでなく、自分よりも体の大きな動物を連れて無事帰ってこられたことへの充足感もあるんです。もっとも、ハリーの方だって私に合わせてゆったりしたペースで歩いてくれているのですが。大きな黒い犬を連れて歩く様子がもの珍しいようで、近所の小学生たちには“魔女”というあだ名を付けられています(笑)。

犬との散歩って不思議なもので、出かける前は少し億劫だったとしても、行って後悔したことは一度もないんです。100%満足することが約束されていて、かつお金のかからない、最高のアクティビティだと思っています。

自分だけで抱え込まず、
時には他から力を借りることも。

心が普段に比べて乱れているなと感じた時は、買い物をすることが一つの発散になっています。大好きな漫画を買ったり、メイク道具を買ったり。先日も、冬物のコートをあっさり購入しました。大きな仕事を終えた後のご褒美としても、仕事が進まない時に自分を追い込むためにも。溜め込んだものを吐き出すような感覚で、時には好きなものを奮発して買うことが、心をしずめる助けになっているかもしれません。

そして特に心に不調を感じる時は、メンタルクリニックに行くことも。ハードルが高いように感じる方も少なくないかもしれませんが、私の場合は先天性の病気と付き合ってきたこともあり、病院へ通うということ自体にあまり抵抗がないんです。特に40〜50代になるとホルモンバランスが崩れて、知らないうちに心のアップダウンが激しくなり、自分の心がけや工夫だけで対処することが難しい場合もあります。一人で抱え込まず、積極的に医療の力を頼るのも、心の健康を安全に、かつ効率よく保つためには大事だと思っています。

“自分だけの世界”に戻るため、
時にはドライブでの逃避行。

誰しもが自分の中に、“自分だけの世界”を持っているものだと思います。私にとって心がしずまっているのは、その世界に没入できる時。どんなに短くても、一日の中に自分だけの世界に戻ることができる時間を作るのが欠かせません。とはいえ家族と暮らしていると、一人の時間や空間を確保することはなかなか難しいものです。ゆえにストレスを感じた時は、ドライブをして、心身ともに“逃げる”というのも一つの手。車に乗り込み琵琶湖大橋を渡って、喫茶店に行ったり、夜の静かなショッピングモールに行ったり。物理的に一人の時間と空間を作り、自分の世界に戻る時間をとることでバランスを保っています。

そして今後はもっと、自分だけの世界に戻っていく時間を増やしていきたいなとも。これまでは“突っ走るフェーズ”で、家族のために時間を使い、仕事をひたすら詰め込み、時間の経過も忘れるほどせわしない毎日を送ってきました。ですが50歳を越え、人生の折り返し地点を過ぎたことも実感する中、あくせく期限に追われるばかりでなく一日一日を大切に過ごすことも大事なのではないかなと。

庭の草刈りをしたり、部屋の壁を塗り替えたり、仕事場を整えたりと、もっと住み心地が良い家へと自分の手でリフォームしたいですし、しばらくやめてしまっていた料理をまたはじめてみるのもいいですね。来年には息子たちも大学生になるので、“落ち着くフェーズ”へと移行して、少しずつ「自分」を優先させていけたらいいなと思っています。

村井理子

むらい・りこ/静岡県生まれ。訳書に『ブッシュ妄言』(ぺんぎん書房)、『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』(きこ書房)、著書に『兄の終い』(CCCメディアハウス)、『村井さんちのぎゅうぎゅう焼き』(KADOKAWA)、『実母と義母』(集英社)などがある。

きょうの新月
2024年1月11日(木)PM8:57
山羊座の新月

普段私たちが使っているカレンダーは、太陽の運行を基に作られていますが、大地を明るく照らす太陽が沈むと、月の時間が始まります。月の満ち欠けやリズムを意識し始めると、忙しい日常から離れて心を鎮めるコツが掴めるようになります。あなたの生活にも月の時間を取り入れてみませんか。

きょうの過ごし方

山羊座の新月「長期目標を立ててみよう」

新月は植物の生長でいうと「種」に当たります。毎月やってくる新月の日は、自分と向き合い、未来の私に向けて「種」をまく最良の日です。

2024年が始まりました。今年はじめての新月は、1月11日(木)PM8:57に、天の山羊座で起こります。山羊座は、占星術で“社会性”と関係が深い星。山羊座の新月は、仕事への責任感や自己管理能力、目的達成に向けてストイックに立ち向かう力を授けてくれます。新年の始めに長期目標を定めてみませんか。新月の持つ不思議な力が、目標に向かって進むあなたを後押ししてくれるでしょう。

「時間を味方につける」もこの新月のテーマ。あなたに時間の感覚を授けてくれます。意識的に、仕事や生活の中で期日や締め切りを設けてみましょう。人生は永遠ではなく“限り”があると知れば、おのずと時間を惜しんでやるべきことに邁進できるはずです。

また、山羊座は華美な生活を好まず、ミニマルな美しさをよしとする星座です。たとえば、自分の部屋をシンプルで美しい空間に仕上げたり、経済面でも生活固定費を見直したり、余計なものを削ぎ落とすよい機会です。そして夜になったら、今後のあなたの「夢や目標」をノートなどに書き記すと、新月が不思議なパワーをくれるはずです。

つぎの新月に向けて

新月から3日ほど経つと、夕暮れの西の空に銀色の三日月が見えます。新月にまかれた「種」が芽を出し成長するイメージを思い描きながら、日々月が満ちていくのを眺めてみましょう。満月までの「月が満ちていく期間」(2024/1/11~1/26)は、心とカラダに栄養を与えてください。満月が過ぎ、次の新月までの「月が欠けていく期間」(1/26〜2/10)は、不要なものを手放す、ダイエットに取り組む、また人間関係を見直すのによい期間です。

著者紹介

岡本 翔子

おかもと・しょうこ/心理占星学研究家。ロンドンにある英国占星学協会で、心理学をベースにした占星術を学ぶ。英国占星学協会会員。
占星術とライフスタイルを組み合わせたコラムを『CREA』『婦人画報』『美ST』『料理通信』などに寄稿。著書・訳書多数。
月の満ち欠けや星座を記し、月のリズムを生活に生かすヒントが満載のカレンダー『MOONCALENDAR2024』を10月に発売。不定期でモロッコの旅行会社と「月の砂漠ツアー」も行っている。

心しずまる言葉

神野紗希さんが読む「花と鯨」

書き手が熱量をもって大切に紡ぎ、丁寧に磨き上げた言葉たち――。
それらにそっと耳を傾ける時間には、自然と心も穏やかになっていくものです。ここでは、様々な思いを乗せて綴られた文章を、書き手が自らの声で届けます。
俳人の神野紗希さんが読むのは、新たに書き下ろした俳文「花と鯨」です。彼女自身が夜更けに俳句を書く時の頭の中のイメージに着想を得た作品なのだそう。「鯨」という季語が織り込まれた美しい言葉を介して浮かぶ、深い海、遠い宇宙、そして静かな夜の町の情景が、聞き手の心をしずめてくれます。

「心しずまる言葉」は、小説やエッセイ、詩、俳句など、様々な形式で書かれた文章作品を、著者自らが朗読し、音声で届ける連載企画です。夜、眠りにつく前に、あるいは一人で静かに過ごす時間のお供に、楽しんでいただけたら幸いです。

読んだ人

神野紗希

こうの・さき/1983年愛媛県生まれ。俳人。お茶の水女子大学文教育学部日本語日本文学コース卒。 同大学院比較社会文化学日本語日本文学コース修士課程卒。 高校生の頃、俳句甲子園を機に作句をスタート。句集に『光まみれの蜂』『すみれそよぐ』、エッセイ集『もう泣かない電気毛布は裏切らない』など。2019年には『日めくり子規・漱石 俳句でめぐる365日』で第34回愛媛出版文化賞大賞、第11回桂信子賞を受賞した。現代の口語を活用したのびやかな作風で、今を生きる命の光を書きとめる。

読んだ作品

『花と鯨』
神野さんが今回の企画のために書き下ろした俳文。「外から遮断され、孤独になる夜更けにこそ、自分という輪郭から解放され、自然や世界に近づくことができる」。そんな彼女の感性が反映された、ある夜の一幕が切り取られている。
作品はこちら

ひとり時間の
スキンケアメソッド

日々移りゆく、からだ、こころ、そして肌。
鏡に映る自分の肌のコンディションって調子が良いときばかりじゃない。ストイックな攻めの美容がどうもピンと来ない日だってある。
だからこそ意識したいのは、〈鎮める〉美容。

今回は年末年始の慌ただしい時期を経て少し落ち着いた今、新年のあたらしい気持ちで取り組みたいスキンケアのポイントをお話します。

こころ新たに、
透明感あふれる
肌づくりをスタート

仕事納めや子育てのイレギュラーな行事。そして友人やパートナー、家族と過ごすホリデー。師走の慌ただしいムードから一転して、お正月はゆったり流れる時間を慈しめたでしょうか?
新年特有の澄み渡った気分で取り組みたいのは、冬の寒さにも、再び始まる多忙な日々にも負けない肌作り。こころ新たに自分自身の肌を見つめ直すとともにステップアップさせるためにも、スキンケアをブラッシュアップしてみましょう。

「少し時間に余裕があるかも」と
感じたら
スペシャルケアを

昨年末をふりかえると、多忙によって疲れが溜まり肌や心が沈みがちになった日もあったかもしれません。ですがせっかくの新しい一年。週末や「少し時間がありそう!」と感じたタイミングを、スキンケアに充ててみませんか?
いつもならしないようなプラスワンの工程を加えてみたり、少し手間をかけて肌の声に耳を傾けてみたり。
穏やかな心持ちで朝か晩、あるいはその両方のスキンケアを楽しむことで、幸先のいいスタートが切れるかもしれません。

スキンケアの前にホットタオルで
顔を温めてほっこり気分に

朝晩の寒さを実感する今。おすすめのプラスワン美容はスキンケア前のホットタオル。
化粧水などの肌なじみをよくする導入美容液であるブルーミオ ディープブーストセラム。それを最初に塗布する前にホットタオルで顔を覆って温めてあげましょう。
水で濡らしたタオルをくるくると巻き、ラップで包んだら500Wで30~60秒ほど温めを。ここで注意したいのはタオルの温度。電子レンジで温めた直後のタオルはやけどの恐れがありますので、様子を見て取り出してから熱さに気を付けつつラップをはずして、タオルの温度の確認忘れずに。
適温のホットタオルで顔を包みこんで深呼吸をすることで、気持ちがすっきりするとともに、さらなる角層のお手入れが可能に。いつも以上に肌の土台を整えることができるはずですよ。
また、そのワンステップを加えることで、その後使うディープモイストローションによってうるおいで満ちる感覚や、モイストリペアクリーム特有のうるおいを閉じ込める感覚をますます効果的に感じられるかもしれません。

いかがでしたか?季節やコンディションに翻弄されることなく、自分自身や自分の肌を愛せる優しいヒントとして感じていただければ嬉しく思います。

次回はもっとも厳しい寒さを感じる頃、過酷な乾燥にも負けないスキンケアを紹介する予定です。どうぞお楽しみに。
朝目覚めて、自分の肌を鏡で見て、ブルーミオと共に触れる瞬間が日に日に楽しみになっていきますように。

著者紹介

前田 紀至子

まえだ・きしこ/1985生まれ。フェリス女学院大学文学部卒業。
新潮社『nicola』専属モデルや光文社『JJ』編集部でのライターを経て、フリーランスエディター、ライターとして活動中。
旅や、ビューティ、ライフスタイルに関する記事をさまざまな媒体に寄稿。ポジティブな美意識や生活に関する提案で支持を集める。

次回のニュームーンレターは2月10日配信予定です。
登録がまだのかたはこちら*から。
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心がしずまると言われている新月の日に
お届けするBLOOMIOからのお便りです。

心がちょっとざわざわした時、
すこし落ち着きたいな、と思った時に
読んで、聴いて、心しずまる時間を
持っていただけるような内容です。

夜、寝る前や、家事や仕事の合間の
ちょっと息を抜きたいひとときに
楽しんでいただけたらうれしいです。