<知っておきたい>「逆流性食道炎」の正しい知識 (1)「逆流性食道炎」の原因・症状を解説 逆流性食道炎とは 逆流性食道炎の原因・仕組み 逆流性食道炎の症状 逆流性食道炎セルフチェック 食後に胸焼けがしたり、夜遅くに飲食した翌朝に胸のあたりがもたれたりすることはありませんか?もしかしたらそれは逆流性食道炎かもしれません。近年日本人でも発症する人が増えているというこの病気の原因やどんな症状を感じるのかについて、消化器内科専門医が解説します。 逆流性食道炎とは 逆流性食道炎は、「胃食道逆流症」という病気の分類の一つです。胃の中の胃酸が食道に逆流することで胸焼けなどの不快な症状があったり、食道の壁が胃酸によってただれたり(食道炎)します。 胃食道逆流症は以下のように分類され、食道炎を起こしているものを逆流性食道炎(びらん性胃食道逆流症)としています。 逆流性食道炎を含む胃食道逆流症は、命にかかわるような病気ではありませんが、胸焼けのせいで食事が楽しめない、よく眠れないというように、日常生活に支障をきたします。生活の質(QOL:Quality of Life)が下がる原因になるので、適切に対処することが大切です。 近年、逆流性食道炎を含む胃食道逆流症の患者数は増加しています。その原因として考えられているのは、食生活の欧米化(和食よりも洋食の方が胃酸の分泌が増える)やピロリ菌感染者の減少など。 ピロリ菌感染については、かつては環境からの感染があったと言われており、多くの人が感染していました。現在は環境からの感染はほとんどなく幼少期の母子感染がメインルートと考えられています。 逆流性食道炎の原因・仕組み 胃では食べたものを消化するために胃酸が分泌されています。胃酸は強い酸性なので、胃は自身が胃酸で消化されないように内側を粘膜で守っています。一方、食道の内側の粘膜は胃よりも胃酸からの防御機能が弱く、そのため、胃酸が食道に逆流すると食道の内側が胃酸に触れてただれ、食道炎が起こるのです。 また、本来、胃と食道の境目は食べ物が通るとき以外は括約筋という筋肉の働きによって閉じていて、胃酸の逆流を防いでいるのですが、括約筋の働きが弱くなると胃酸が食道に逆流してしまいます。 括約筋の働きが弱くなる原因としては以下が考えられます。 加齢 暴飲暴食 脂肪分の多い食事 アルコール 喫煙 胃に圧力がかかっている(腹圧がかかっている)状態でも、胃酸の逆流が起きやすくなります。その原因としては、 妊娠中 肥満 便秘 などが挙げられます。 加えて、健康な人の場合は食道の蠕動運動(食物を胃に送る働き)で、胃酸が逆流してもすぐに胃に戻されるのですが、それがうまく機能しないと胃酸が長時間食道に留まり、食道炎を引き起こします。 ほかにも、食道裂孔ヘルニアという状態だと、胃と食道の境目が通常よりも上(口側)に上がってきてしまっているので、逆流を防止する機能が弱くなり、胃酸が逆流しやすくなります。 ちなみに、非びらん性胃食道逆流症の場合は、食道炎は起こっていません。これは食道が知覚過敏状態であることによるもので、食道がただれるほどではないわずかな胃酸の逆流や、酸性の強くない胃液でも自覚症状を感じることがあります。 逆流性食道炎の症状 先に、逆流性食道炎では胸焼けの自覚症状があるとお話ししましたが、胸焼けのほかにも以下のような症状を自覚することがあります。 胸焼け(みぞおちの上あたりが焼けるような感じ) 胃酸の逆流を感じる のどの違和感 咳 げっぷがよく出る また、胃酸の逆流を繰り返し、食道が長期にわたって胃酸にさらされる食道炎の状態が続くと、さまざまな疾患につながりかねません。 以下のような疾患になる可能性があります。 食道の潰瘍(かいよう:食道の内側の壁がただれる) 食道狭窄(食道が狭くなること) バレット食道(食道の細胞変化) 食道に潰瘍ができると、食道炎の症状に加え、吐き気や胸焼けを自覚する位置に痛みを感じる場合もあります。食道狭窄では、食べ物を飲み込みづらくなり、途中で詰まって息ができなくなることも。 バレット食道は、食道の内側の粘膜(扁平上皮)が変化する病気で、食道がんに進行するリスクが若干高くなります。 逆流性食道炎セルフチェック 先に挙げたような自覚症状がある場合は、逆流性食道炎の可能性があります。胸焼けがあるからといって必ず逆流性食道炎とは限りませんが、心配な症状があれば消化器内科を受診し、適切な診察・検査を受けるようにしてください。 こんな症状を自覚したら要注意 胸焼け 胸が重い、苦しいと感じる 酸っぱいものや、苦いものが込み上げてくる のどの違和感 のどがイガイガする 咳 げっぷがよく出る お腹に膨満感がある 監修:とよしま内視鏡クリニック院長 豊島治先生 東京大学医学部卒業。東京医科大学 地域医療指導教授。日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、欧州消化器内視鏡学会(ESGE)国際会員、米国消化器内視鏡学会(ASGE)国際会員、World Journal of Gastroenterology編集委員。とよしま内視鏡クリニックは年間10,000件の内視鏡検査を行い、診療・医療技術の向上を目指した医学研究のため、学会発表、研究活動も行っている。ピロリ菌の除菌・治療にも力を入れており症例は5,000例を超える。著書『「食道/胃/大腸がんの早期発見・予防&内視鏡」最前線』 正しい情報を掲載するよう注意しておりますが、誤った情報があればご指摘ください 医療情報に関するご指摘はこちら からだの気になる症状別ガイド一覧へ戻る