「体臭」の原因・症状

<知っておきたい>「におい」の正しい知識 (1)「体臭」の原因・症状

汗のにおいや加齢臭などの体臭に気を配ることは、社会生活で気をつけたいマナーの一つ。「相手が自分の体臭を不快に思っているかも」と不安になると、コミュニケーションもうまくとれなくなってしまうことでしょう。そこで本記事では、医師監修のもと体臭について解説。私たちを悩ませるにおいの原因や症状について説明します。

体臭はほとんどの人が抱える悩み

体臭はほとんどの人が抱える悩み

ロート製薬が2018年に行った体臭に関する調査(首都圏在住の30~49歳の有職者の女性にアンケートを実施、有効回答1,101人)によると、女性の8割が自身の体臭について悩んでいることがわかりました。
最も多かったのは汗のにおいで、全体の51.4%。次は腋(わき)の40.6%で、デリケートゾーンの36.4%、足の35.7%と続きます。みなさん、においについてはかなり敏感なようです。その証拠に、においについて何らかの対策をしていると答えた人数は、7割にものぼりました。

しかし体臭と一口にいっても、その原因はさまざまです。汗をかいたときをはじめ、生活スタイルが乱れているとき、何らかの病気を患っているとき、女性なら月経が起きているときなどに体臭が強くなる傾向がありますが、それぞれに原因は異なり、したがって対策も異なります。つまり、体臭を抑えたいなら、まずは原因をよく理解することが必要なのです。

体臭の原因

体臭の原因

体臭の主な原因としては、先のアンケートで気になるにおい1位でもあった汗が挙げられます。しかし、汗にも大きく分けて「エクリン汗腺から出る汗」と「アポクリン汗腺から出る汗」との2種類があり、それぞれににおいが発生する仕組みは異なります。

原因
  • エクリン汗腺から出る汗によって体臭が発生する仕組み

    エクリン汗腺は全身の皮膚表面にあり、汗を分泌することで、体温や水分の調整を行っています。体温が上昇すれば活発に汗を出し、そうでないときも、皮膚が乾燥しないように微量の汗を出しているのです。このエクリン汗腺から分泌される汗は、ほとんどにおいがしません。なぜならこの汗は、水分と塩分、ミネラルなどで構成されており、においの元となる成分がほぼ含まれていないから。つまり、汗そのものは体臭の原因ではないのです。
    しかし、この汗も放っておくと脂肪酸や垢、皮膚常在菌と混ざり、やがては細菌も繁殖して、嫌なにおいを発することになります。原因は、汗自体ではなくケアをしないことにあるのです。

  • アポクリン汗腺から出る汗によって体臭が発生する仕組み

    アポクリン汗腺は、腋や乳首、陰部といった特定の部位の毛包内にのみ存在します。エクリン汗腺の汗とは違い、タンパク質や糖分、鉄分、アンモニア、脂性物質などさまざまな成分を含み、脂肪酸と混ざったり菌によって分解されたりといったことが原因で、エクリン汗腺の汗よりも強いにおいを発します。きついにおいを放つワキガは、このアポクリン汗腺の数が多いために起こるもの。この場合も汗のケアは不可欠ですが、場合によっては外科的処置など、それ以上の対応が必要になることもあります。

また汗の他に、年齢を重ねるとともに発生する加齢臭も、嫌な体臭の代表格といえるでしょう。これは皮脂腺から分泌される皮脂(9-ヘキサデセン酸)が、過酸化脂質と結合することによって酸化分解され、「ノネナール」というにおい物質に変化して発生します。加齢臭はこのように独特のメカニズムで発生するので、皮脂や汗をしっかりと洗い流すとともに、専用のデオドラント製品を使用することが必要になります。

この他、何らかの病気が体臭の原因になることも。こちらはこの後で詳しくご説明します。

においは病気のサイン?体臭と病気の関係

においは病気のサイン?体臭と病気の関係

先にも少し触れたとおり、病気が体臭の原因になることもあります。例えば、糖尿病にかかると「ケトン臭」と呼ばれる甘いにおいが体から漂うよう方も。糖尿病を含め、以下のような病気で体臭(口臭を含む)が発生することがわかっています。

原因
  • 糖尿病

  • 甲状腺機能亢進症

  • 中枢神経障害

    パーキンソン病、片側麻痺など

  • 魚臭症候群(代謝異常)

  • 口内炎症

    歯槽膿漏、口内炎、歯肉炎など

  • 鼻やのどの疾患

    扁桃腺炎、慢性鼻炎、蓄膿症など

  • 呼吸器系疾患

    気管支炎、気管支拡張症、肺結核など

  • 胃腸疾患

    胃炎、無酸症、胃拡張、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなど

  • 肝臓や腎臓の機能低下

周りの人から「変なにおいがする」といわれたり、今までとは違う体臭を感じたりしたら、一度医師に相談することをおすすめします。

【部位別】体臭の原因や特徴

【部位別】体臭の原因や特徴

ここからは、体の部位別に体臭が起こる原因やにおいの特徴などをご紹介していきます。

特徴
  • 皮脂腺が発達している頭は、強い体臭が発生する代表的な部位です。多量の皮脂が分泌されて頭皮や髪にたまると、細菌がそれを分解。嫌なにおいを発するようになります。
    また髪の毛、特に湿った髪の毛には、空気中のにおい分子を吸着しやすいという特徴があります。自身の発するにおいと、周囲のにおい、その両方が合わさって体臭となってしまう部位が頭なのです。

  • 「体臭の原因」で説明したように、腋にはアポクリン汗腺という嫌なにおいになりやすい汗を出す組織があります。この汗が原因で腋のにおいがきつい状態を、一般的にワキガといいます。特有のスパイスや硫黄のようなにおいがするのが特徴です。ワキガの人は、アポクリン汗腺が大きく、かつ数が多く、より強いにおいにつながる汗を多く分泌する傾向にあります。
    また、腋毛が生えている場合は、ない場合に比べて細菌が繁殖しやすいため、より体臭が発生しやすくなります。

  • 体の中で最も角質層が厚い足の裏は、大量の垢が発生しやすい部位。新陳代謝や摩擦によって、角質がはがれることが原因です。この垢に脂質が混ざると、とたんに悪臭が発生します。靴や靴下を長時間履いたままだったり、手入れのされていない汗がしみた靴を履いたりすると、カビや菌が汗と皮脂を分解させ、独特なにおいを発することもあります。

  • 生殖器

    生殖器の周辺には、腋と同じようにアポクリン汗腺があり、強い体臭を発することがあります。
    また女性の場合は、細菌やトリコモナスなどによる膣炎を起こしているときも、嫌なにおいを発するようになります。

体臭最新トピックス!女性のにおいに関する研究

体臭最新トピックス!
女性のにおいに関する研究

ロート製薬が行った調査で判明したのは、女性特有の甘いにおい“SWEET臭”(ラクトンC10、ラクトンC11という成分)があること、そしてそれは30代以降に減少すること。
「加齢に伴って自分のにおいが変わった」と感じる女性は多くいますが、その原因の1つが、女性ならではのいいにおいがしなくなってしまうことにあったともいえるでしょう。

つまり、女性がこのSWEET臭をまとうことは、加齢臭の悩みを解消する1つの有効な手段であるとも考えられます。加齢臭対策といっても、嫌なにおいを消すことだけが手ではないようです。

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五味 常明先生
監修:五味クリニック 五味 常明先生
昭和大学医学部を卒業後、昭和大学形成外科などで形成外科学を、多摩病院精神科などで精神医学を専攻する。患者の心のケアを基本にしながら外科的手法を組み合わせる「心療外科」の提唱者で、ワキガ・体臭・多汗治療の現場で実践している。クリニックで治療を行う傍ら、著書を出版し、テレビや雑誌をはじめとした数多くのメディアへも出演。正しい知識や治療法を広める活動にも取り組んでいる。

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