「ワキガ」の原因、予防法・対処法について

<知っておきたい>「におい」の正しい知識 「ワキガ」の原因、予防法・対処法について

自身のニオイに配慮することは、人と接する際のエチケットの1つ。そんな常識が根づいている現代において、腋(わき)から強いニオイがするワキガは、非常に悩ましい病気といえます。そもそもワキガはどういうメカニズムで発生するのか、主な原因や対処法など…。皮膚科医監修のもと、ワキガについて詳しくご紹介します。

ワキガに関する基礎知識

ワキガに関する基礎知識

ワキガは決して珍しい症状ではないので、ほとんどの方がその名前を耳にしたことがあるでしょう。しかし、中には“体臭が強い=ワキガ”と勘違いしているケースも多くみられます。そこでまず初めに、ワキガの基礎的な知識をまとめました。

ワキガとは

ワキガという名称は、腋(ワキ)の下(ガ)で発生するニオイであることに由来し、医学的には「腋臭症」や「アポクリン臭汗症」と呼ばれています。
また、ワキガをそのままにしても、体調を害したり、悪化したりすることはありません。

ワキガの仕組み

私たちの体には、汗を分泌する組織「汗腺」があります。この汗腺には「エクリン汗腺」と「アポクリン汗腺」という2つの種類があり、このうちアポクリン汗腺から分泌される汗がワキガの主な原因です。(詳しくは後述)。全員に起こるものではなく、アポクリン汗腺の数が多い人などに発生します。

ニオイについて

ワキガには独特なニオイがあり、よく「スパイスのような鼻にツンとくるニオイ」や「硫黄のようなニオイ」などと例えられます。また、中国が隋の時代に書かれた医学書「諸病源候論」には“狐臭”と記され、狐や狸に似たニオイと認識されていたようです。

ワキガの主な原因・メカニズム

ワキガの主な原因・メカニズム

ワキガはアポクリン汗腺から分泌される汗によって発生します。アポクリン汗腺から分泌される汗にはタンパク質や脂質等の有機酸が含まれており、それが腋に存在する常在菌により分解されることで、あの独特の嫌なニオイが発生するのです。
なお、エクリン汗腺が体全体の表皮に見られるのに対し、アポクリン汗腺は、腋や乳首、陰部といった特定の部位の毛包内にのみ存在します。つまり、アポクリン汗腺の数は毛の量と関係があり、重症のワキガの人は腋毛の量が多いケースがほとんどです。

ワキガを発症する主な要因

日本人ではおよそ10人に1人の割合で発症するワキガですが、ではワキガになる人とそうでない人とでは、どんな違いがあるのでしょうか?ここからは、ワキガを発症する主な原因を見ていきます。

原因
  • 遺伝

    両親がワキガだと、その子どもも発症する可能性がかなり高くなります。どちらか一方の親だけより、両親ともにであればより高い確率で遺伝が認められています。

  • 性ホルモンの作用

    性ホルモンには、アポクリン汗腺の働きを活発にする作用があります。思春期まではワキガの症状が見られないのはこのためです。赤ちゃんの頃からアポクリン汗腺はありますが、性ホルモンが分泌されて活発に働くようになるのです。
    なお女性の場合は、妊娠や出産、月経などの性ホルモンの影響を強く受ける期間に、一時的にワキガの症状が出る場合もあります。

  • 生活習慣の乱れ

    野菜や魚をほとんど摂らないなど食生活が乱れていたり、過度な飲酒や喫煙の習慣があったり、ストレスに悩まされていたり…。そういった生活習慣の乱れも、ワキガを発症する原因になります。

これってワキガ?今すぐできるセルフチェック方法

これってワキガ?
今すぐできるセルフチェック方法

ワキガ(腋臭症)の診断には、明確な基準がありません。ニオイという曖昧な材料では、なかなか「自分はワキガだ」と判断するのは難しいものです。ここでは、簡単にできるセルフチェックの方法をご紹介します。

  • 耳垢が湿っており、かつ耳毛が多く生えている

    外耳道には、エクリン汗腺が存在しません。つまり、耳垢に湿り気があるのは、アポクリン汗腺から分泌された汗による可能性が高いと考えられます。外耳道にアポクリン汗腺がある場合、腋の下にも数多くアポクリン汗腺があることがほとんどです。
    また、アポクリン汗腺は毛包の中にあるため、耳垢が湿っていてかつ外耳道に毛が多ければ、アポクリン汗腺がある、すなわちワキガであると考えて間違いないでしょう。

  • 下着やTシャツなど、腋に触れる衣類に色がつく

    ワキガでない人の腋汗の色は、透明です。これは、エクリン汗腺から分泌された汗は、水と微量の塩がその大部分を占めているからです。一方、ワキガの人の腋にはアポクリン汗腺が多くあり、アポクリン汗が大量に分泌されます。アポクリン汗は、たんぱく質や脂質、糖質、鉄分、アンモニアなどといったさまざまな物質を含み、これが腋に触れる衣類に黄ばみを残します。

  • 肉類などの高カロリー&高脂肪な食品をよく食べる

    肉をはじめとした高カロリー&高脂肪な食品を必要以上に摂取すると、皮下脂肪がつきやすくなります。そしてその脂肪が、アポクリン汗腺および皮脂腺の活動を促し、結果的にワキガ(腋臭症)を引き起こすのです。日本人に比べて欧米人にワキガが多いのは、こうした食生活が深く影響していると考えられています。

  • 家族など周りの人から腋のニオイを指摘されたことがある

    周囲の人から腋のニオイを指摘されるかどうかは、ワキガかどうかを判断する上でとても重要なポイントです。ニオイはデリケートな問題で、他人にはなかなか伝えづらいため、家族など近しい人に聞いてみるといいでしょう。実は、「自分はワキガだ」と思って病院を受診したものの、ニオイに敏感になりすぎている自己臭妄想(恐怖症)であるケースは多く見られます。

この他に、身内にワキガの人がいたり、体毛が濃かったりする場合も、ワキガである可能性が高くなります。上記のチェックに当てはまり、腋のニオイが気になる場合は、一度皮膚科に相談してみるとよいかもしれません。

実は意外と多い!?女性のワキガ

実は意外と多い!?女性のワキガ

女性の場合、月経や妊娠、出産の際に、一時的にワキガのニオイが強くなることがあります。こうした女性ならではの体の変化は、女性ホルモンの作用で起こりますが、アポクリン汗腺もこの影響を受けるのです。
なお、女性ホルモンの分泌量が減る更年期以降は、ワキガのニオイが気にならなくなってくるケースが多くみられます。

【参考】意外と多い女性の「ワキガ」!そのメカニズムとケア方法

ワキガの一般的な予防法

ワキガの一般的な予防法

ワキガは遺伝的な要因もあるので、予防だけで完全にニオイを抑えられないケースもありますが、以下のような方法でニオイの程度を抑制することはできます。

対策
  • 食生活の改善

    肉をはじめとした高カロリー、高脂肪食の食品はワキガの原因になる可能性があります。牛乳やバターなど、乳脂肪分が豊富に含まれるものも該当します。
    できれば同じたんぱく質でも大豆製品や魚を中心にした食生活を心がけましょう。

  • 飲酒や喫煙を控える

    アルコールやニコチンには、汗腺を刺激する作用があります。摂取するとアポクリン汗腺の働きが活発になるので、控えた方がよいでしょう。また、アルコールやニコチン自体が強いニオイ成分でもあるので、ワキガ体質でなくとも、体臭がきつくなる原因になります。

  • ストレスを溜めない

    ストレスがかかると、交感神経が優位に働きます。すると、暑くもないのに汗(冷や汗など)をかいてしまうことになります。これを精神性発汗といいます。ワキガの原因は汗にありますから、精神性発汗はニオイを抑える上で大敵。ストレスを溜めこまないように心がけましょう。

  • 運動する習慣をつける

    頻繁に運動してこまめに汗をかくと、老廃物の排出を促すことができます。老廃物は細菌の繁殖にも関与するため、この量が減ると、ニオイを軽減できると考えられます。また、適度な運動はストレス発散にもつながります。
    ただし、運動して発汗すると、どうしても一時的にワキガ臭が強くなることがあります。患部をしっかりと洗うことも欠かさないようにしましょう。

ワキガの一般的な対処法

ワキガの一般的な対処法

ワキガと一口にいっても、その程度はさまざまです。軽度のものなら、以下の対処法を実践するだけで、かなりニオイを抑えることもできます。

対策
  • こまめにわき汗を拭く

    ニオイの原因となる汗をこまめに拭くことで、ワキガのニオイを抑えられます。

  • 腋毛を処理する

    腋に毛が生えていると、細菌の繁殖が活発になります。ニオイが気になるなら処理をするのがおすすめです。

  • 制汗剤や殺菌剤を使用する

    汗の分泌を抑える制汗剤、もしくは細菌の繁殖を抑える殺菌剤を、腋の皮膚に塗布するのも効果的です。それぞれ軟膏やスプレー、ローション、パウダーなどがあります。

上記を試してもニオイが気になる場合は、皮膚科や形成外科を受診するとよいでしょう。
原因や程度によって治療法は異なりますが、アポクリン汗腺や皮脂腺を除去する手術を行ったり、電気の力でこれらを破壊したり、ボトックス注射で発汗を抑えたりといった方法があります。医師からワキガと診断されれば、治療方法によっては保険が適用される場合もあるので、まずは相談してみることをおすすめします。

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佐藤 弘行先生
監修:神保町駅前皮膚科院長 佐藤 弘行先生
東京大学医学部を卒業後、同大学の附属病院や癌研有明病院、日本赤十字社医療センターをはじめとした複数の病院に勤務した後、2014年に神保町駅前皮膚科を開院。日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医。

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