蕁麻疹の原因・仕組みを解説

<知っておきたい>「蕁麻疹(じんましん)」の正しい知識 (1)蕁麻疹の原因・仕組みを解説

ある日突然、強烈なかゆみとともに現れる蕁麻疹。子どもから大人まで悩まされる人は多いのではないでしょうか。時間がたつと次第におさまることから、病院にいくまでもないと自己判断する人もいるはず。しかし、蕁麻疹のメカニズムを正しく理解していないと悪化や慢性化してしまう恐れがあります。ここでは蕁麻疹の原因や仕組みについて分かりやすく解説していきます。

蕁麻疹について

蕁麻疹について

子どもから大人まで悩まされ、強烈なかゆみを伴う蕁麻疹。まずは蕁麻疹の語源、湿疹との違いについて解説します。

用語解説

「蕁麻疹」という漢字の語源は、日本に自生しているイラクサの名前「蕁麻(じんま)」からきています。この植物は、茎や葉に細かい棘を持ち、基部にヒスタミンや蟻酸が含まれた嚢がありますが、棘に触るとこの嚢が破れて皮膚につき、痛みやかゆみを引き起こします。このことから、イラクサが引き起こす発疹を蕁麻疹としたのがはじまりといわれています。

蕁麻疹と湿疹の違い

蕁麻疹と湿疹は、どちらも赤みやかゆみをともなった症状がでることから、混同されやすいですが、似て非なるものです。湿疹の場合は、特定の場所の皮膚表面に赤いぽつぽつした水疱ができ、時間とともに悪化していく傾向があります。これに対して蕁麻疹は、突然、皮膚が赤く盛り上がる膨疹(ぼうしん)がでて、24時間以内におさまるケースが多いのが特徴です。また、局所的にでる湿疹と違い、蕁麻疹は全身に症状が及ぶこともあります。蕁麻疹と湿疹では、治療に使う薬も異なるため、正しく見極めることが肝心です。

蕁麻疹の主な原因

蕁麻疹の主な原因

蕁麻疹の原因は、「アレルギー性」によるものと「非アレルギー性」によるものの2つに大別されます。

原因
  • アレルギー性蕁麻疹

    食べ物やダニ、ホコリ、花粉などのアレルゲン(アレルギーを起こす物質)が原因となり発症します。

  • 非アレルギー性蕁麻疹

    熱さや寒さ、身の回りの環境といった身近なものに起因します。

一般的には、経口摂取によって引き起こされるアレルギー性のケースが多いとされていますが、多くの場合、原因の特定が非常に難しく、アレルギー性、非アレルギー性を問わず約70%の蕁麻疹は原因不明です。原因の特定ができているケースでは、日常生活上にある身近なものであったり、珍しいパターンであったり、いくつかの要因が組み合わさっていたりします。

たとえばエビを食べると毎回、蕁麻疹を発症するというのであれば、エビが原因となり、血液検査の結果、エビアレルギーによる蕁麻疹と特定することができます。しかし、原因が分からないケースでは治療に難渋することがあります。

蕁麻疹の仕組み

蕁麻疹の仕組み

蕁麻疹が起こるメカニズムについて説明していきましょう。蕁麻疹には血液、血管、皮膚、ヒスタミンが関わっています。ヒスタミンとは、炭素、水素、窒素でできている「活性アミン」と呼ばれる物質です。このヒスタミンは脳の中にも存在し、目を覚ましている状態を維持することや記憶力に関わる神経伝達を担っており、食欲を抑制する働きもあります。したがって、抗ヒスタミン薬を飲むと眠くなって注意散漫になったり、食欲が増加したりすることが知られています。

身体をめぐる血管には血液が流れていますが、この血液は酵素を運ぶ赤血球と免疫・アレルギーに関わる白血球、そして血漿という液体からできています。蕁麻疹を発症した場合、白血球の一種である「マストセル(mastcell)」と呼ばれる肥満細胞が注目されます。肥満といっても太ることの肥満とは無関係で、アレルギーを起こすヒスタミンやロイコトリエンなどの原因物質を細胞が抱え込んでいる様子からそう呼ばれています。

このマストセルが、体温が変動したり、ひっかいたりする刺激を受けて、抱え込んでいる物質を血液中に放出することで、かゆみや腫れが起こります。その部位の血管は、管状の一部が、風船のように膨らんでしまいます。膨らんだことにより血管の壁のすき間から血漿が漏出し皮膚を押し上げるために、盛り上がった状態になります。また、拡がった分だけ血流量が増えるため、皮膚が赤くなるのです。

蕁麻疹の仕組み
蕁麻疹によく聞かれる悩み

蕁麻疹によく聞かれる悩み

原因不明のケースが大半を占めるだけに、蕁麻疹に関する不安を抱える方は多いでしょう。以下では、よく聞かれる質問についてお答えします。

  • 病院は何科にいけばよいですか?

    基本的には皮膚科ですが、膠原病(こうげんびょう)などの病気で蕁麻疹がでていることがありますので、大人なら内科、子どもなら小児科でもよいでしょう。

  • 蕁麻疹はうつりますか?

    感染によるものではないため、蕁麻疹自体に感染源はなく、うつることはありません。ただし、感染性蕁麻疹というウィルスや細菌に感染することで発症する蕁麻疹もあります。

  • お風呂に入った後にできるぶつぶつは蕁麻疹ですか?

    蕁麻疹の場合もありますが、一概には言えません。その形やかゆみの強さ、範囲、経過で区別することになります。蕁麻疹でもお風呂上がりに悪化することもあります。

  • 蕁麻疹は顔にもでますか?

    全身にでます。顔にもでますし、身体のどこにでもでる可能性があります。光蕁麻疹の場合は、光が当たりやすい顔にでていることもあります。

  • 蕁麻疹体質は治りますか?

    蕁麻疹の原因によります。アレルギー体質についてはよくなる場合、変わらない場合とさまざまです。
    食物が原因になっている場合、卵などはよくなることがありますが、甲殻類、ソバなどは治りにくいことがあります。特発性蕁麻疹は原因不明ですので、再発を繰り返すことがあります。遺伝性の蕁麻疹もありますので、治るかどうかは原因にもよります。

  • 蕁麻疹のおさまる時間はどれくらいですか?

    数分から数時間で症状がおさまり、多くは24時間以内に治ります。反対にいうと、24時間以上症状が続けば、蕁麻疹でない可能性があります。ただ、ある個所にでてから別の個所にもでてきて、24時間で移動したように見える蕁麻疹がでることがありますが、その個所での症状は24時間以内に消失します。

  • 蕁麻疹と肝臓の関係はありますか?

    2つの意味があるかもしれません。肝臓の病気によって起こる蕁麻疹と肝臓での代謝に影響するアルコールなどによる蕁麻疹です。膠原病や感染症によって起こる蕁麻疹では肝臓に含まれる酵素AST、ALTが上昇します。肝臓に負担がかかった結果、蕁麻疹になるのか、その因果関係の証明は難しいといえますが、一部に肝炎という感染症にともない起こる蕁麻疹があります。

  • 蕁麻疹のかゆみにはどう対処すればよいですか?

    とにかくかゆい、という場合は、かゆみを軽減するために患部を冷やす方法があります。ただし、寒冷蕁麻疹では禁忌です。そのため、外用薬を冷やして使うようなことも控えましょう。腫れている場合も同じです。この場合、症状を鎮めるためには一般的に抗ヒスタミン薬を内服します。
    また、原因不明の蕁麻疹を繰り返す場合は、継続的な内服薬を含めた治療が必要になります。

  • 蕁麻疹の原因になるものは今後、食べられないのですか?

    食べたいものが食べることができなくて辛い、という声もよく耳にします。蕁麻疹の原因になる食材については、基本は遠ざけることです。ただし、食材によっては、経口免疫療法という継続的に経口摂取することで、食べられるようになる場合もあります。食材がアレルゲンとなった場合の対策については(2)蕁麻疹の主な症状・種類を参考にしてください。

参照元:『じんましんの「真」常識』清益 功浩(医薬経済社)

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清益 功浩 先生
監修:大和高田市立病院 小児科部長 清益 功浩 先生
1992年京都大学医学部卒、1999年京都大学大学院卒。医学博士、日本小児科学会認定専門医・指導医、日本アレルギー学会認定専門医・指導医。著書に、『アトピー治療の常識・非常識』(医薬経済社)、『じんましんの「真」常識』(医薬経済社)などがある。

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