<知っておきたい>「湿疹(皮膚炎)」の正しい知識 (2)湿疹(皮膚炎)の主な症状・種類
湿疹は、皮膚にかゆみが出て、赤くなったり、ぶつぶつができたりします。湿疹にはさまざまな種類があり、成人や子供、高齢者などによっても起こりやすい湿疹があります。今回は、湿疹の主な症状や種類を、皮膚科医監修のもとご紹介します。
主な湿疹(皮膚炎)の症状
湿疹の症状には主に次のものがあります。
かゆみ
かゆみは皮膚に炎症が生じたり、ヒスタミンという物質が体内で発生したりすることで起こります。かかずにはいられないほどのかゆみが出ることもあります。かゆみは弱い痛みだと考えられていますが、最近になってかゆみの原因を作る物質が発見されるなどかゆみに関する研究は日ごとに進められています。
赤いぶつぶつ・ざらざら
皮膚が赤くなることを「紅斑(こうはん)」と呼び、ぶつぶつは「丘疹(きゅうしん)」と呼びます。紅斑が生じるのは毛細血管が拡張するためで、丘疹は毛細血管が増大して血漿(けっしょう)が血管の外に漏れ出すことで皮膚が盛り上がってできるものです。
小さな水ぶくれ
小さな水ぶくれのことを「小水疱(しょうすいほう)」と呼びます。皮膚の表皮という一番上の層に水がたまることで、皮膚が盛り上がって見えます。
健康な皮膚に、いろいろな要因によって生じたかゆみを伴う発疹である原発疹(げんぱつしん)は、掻き壊すなど経時的変化により、化膿したり、びらん(皮膚や粘膜の表皮が欠損し、下部組織が露出した状態)になったりする続発疹(ぞくはつしん)につながります。
よく起こりやすい湿疹(皮膚炎)
アトピー性皮膚炎
強いかゆみのある湿疹が出て、悪くなったりよくなったりの状態を繰り返します。家族にアトピー性皮膚炎や気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎を持つ人がいたり、もともと肌のバリア機能が弱かったりすると、アトピー性皮膚炎になりやすいことがわかっています。
手湿疹
手のひらや手の甲、手の指に現れる湿疹を指します。「主婦湿疹」とも呼ばれるもので、日常的に接する水や洗剤などで肌のバリア機能が損なわれ、皮脂が少なくなることで生じるのが一般的ですが、アトピー素因がある人に多いと言われています。手のひらや指が乾燥して赤くかゆくなり、悪化するとヒビ割れや痛みが生じることもあります。
接触皮膚炎
皮膚への原因物質の毒性、物理的刺激により誰にでも生じる一次刺激性接触皮膚炎と、漆(うるし)や金属などアレルギーによって生じるアレルギー性接触皮膚炎があります。赤くなったり、小さな水疱などの湿疹症状が出ます。
手湿疹には、美容師さんのように職業的に手を酷使することによる一次刺激性の接触皮膚炎の場合と、ラテックスアレルギーのようにアレルギー反応による場合などあります。手湿疹だと軽く考えず、発症している原因を知ることも大切です。
脂漏性(しろうせい)皮膚炎
顔や頭、わき、陰部など、皮脂の分泌が活発な部位に現れます。カサついて角質が目立つ肌に、赤みのある発疹ができ、黄色っぽい“かさぶた”ができたりします。ときに、顔のアトピー性皮膚炎や化粧品による接触皮膚炎との見分けが難しいことがあります。
貨幣状皮膚炎
特に下肢に貨幣の形のような円形の湿疹が現れ、強いかゆみが出ます。腕や体幹にも生じ、冬にやや多いようです。
自家感作性皮膚炎
軽度の湿疹やかぶれが悪化して起きることが多く、自己の免疫反応により全身の各所に赤いぶつぶつが出たり、腫れたりして激しいかゆみが生じます。
皮脂欠乏性湿疹
加齢や入浴で体を洗いすぎるなどが原因で、水分保持力が低下して皮脂が減った状態を「乾皮症」といいます。このバリア機能が低下している乾皮症の肌に何らかの刺激が加わり、湿疹になったものです。皮膚がカサカサになり、強いかゆみが出ます。高齢化社会において特徴的です。
酒さ様皮膚炎
「酒さ(しゅさ)」という顔が赤くなる症状の病態によく似ている皮膚炎であることからこう呼ばれます。顔に赤みが生じたり、ニキビのようなぶつぶつが出たりします。ステロイドという薬を塗り続けることなどが原因と考えられています。
汗疱(かんぽう)・異汗性湿疹
手のひらや足の裏に直径2~5mmほどの小さな水疱が多く散らばるように出るものです。原因は不明のことが多いですが、ときに金属アレルギーとも関係する掌蹠膿疱症との鑑別が重要になります
ベテランの漆職人は漆にかぶれない?
漆は「かぶれる」印象がある方も多いかもしれません。漆の主成分であるウルシオールの反応によるもので、皮膚に触れるとそれを排除しようとする体のアレルギー反応により湿疹がおきます。特に、漆器を作る職人さんは、漆を頻繁に触るためアレルギーが心配になります。しかし、毎日漆を扱う漆職人さんでは「かぶれない」人も多いというのです。
実は「漆かぶれ」は何度も経験すると、皮膚の免疫系が変化し、耐性ができ、ほとんど症状が出なくなると経験知として知られているようです。全てのアレルギーで耐性ができるわけではないのですが、漆ではアレルギー反応をしなくなり自然と治ることもあるようです。
年齢により起こりやすい湿疹(皮膚炎)の種類
赤ちゃんが起こりやすい湿疹
乳児脂漏性湿疹、接触皮膚炎(おむつかぶれ)、あせも、食物アレルギーによる湿疹、小児乾燥性湿疹(乾燥による症状としてヒビ割れたり粉をふいたりするほか、刺激が加わるとかゆみやかぶれが生じる)など
子供が起こりやすい湿疹
接触皮膚炎(かぶれ)、小児乾燥性湿疹など
高齢者が起こりやすい湿疹
脂漏性皮膚炎、皮脂欠乏性湿疹、貨幣状湿疹など
子供に多い“毛虫皮膚炎”に注意!
春から夏にかけて、公園など外で薄着で遊ぶ機会が多くなる時期は、皮膚に有毒な虫も活発に活動するようになります。特に毛虫には要注意です。全ての毛虫が毒を持っているわけではなく、有毒毛を持つ一部の毛虫に触れた場合にだけ皮膚炎は生じますが、特に有毒毛を持つ毛虫としてチャドクガによる被害が多いと言われています。毛虫は種によって決まった植物の葉をエサにする習性があり、チャドクガは公園などにも植えられているツバキ、サザンカなどの葉をエサにしています。
1匹の毛虫には何十万本もの毒針毛があり、それに触れたところにたくさんの赤いプツプツとした発疹が出てきて、強い痒みを起こします。明らかに毛虫に触れてしまったと気がついたら、セロハンテープやガムテープなどの粘着テープで周辺をそっと押さえて取り除き、流水で強く洗い流してください。
かゆい発疹がたくさん出てしまっても、ステロイド軟膏の外用を中心とする治療を行えば1週間以内に痒みはよくなりますので、皮膚科専門医などを受診しましょう。
監修:尾見 徳弥先生
日本医科大学大学院卒業 Aarhus大学客員研究教授、日本医科大学客員教授。日本皮膚科学会美容皮膚科・レーザー指導専門医 日本皮膚科学会認定専門医 日本アレルギー学会認定専門医