<知っておきたい>「湿疹」の正しい知識 頭皮・顔に見られる湿疹について解説
頭や顔は人目に触れるところでもあるので、湿疹ができるととても困りますね。頭皮や顔に湿疹ができる病気にはどんなものがあるのでしょうか。湿疹の原因や予防法、対処法についてだけでなく、子どもや赤ちゃんに特有の頭皮・顔の湿疹についても専門医の監修のもと、詳しく解説します。
頭皮・顔に見られる湿疹の種類・症状
どんな病気で頭皮や顔に湿疹がみられるのでしょうか。それぞれの症状について解説します。
-
接触皮膚炎
接触源の刺激やアレルギー反応によって湿疹がみられる疾患です。刺激を受けた場所によって頭皮や顔だけでなく、全身のどこにでもみられ、赤く腫れてかゆみを伴い、水ぶくれなどになる場合もあります。
-
成人期の脂漏性(しろうせい)皮膚炎(脂漏性湿疹)
湿疹ができた場所の皮膚の角質が米ぬか状にはがれたり、赤くなって皮がむけたりする症状がみられ、軽度のかゆみを伴うことが多いです。頭部で発症した場合は、ふけとして自覚することが多いです。よくみられるのは頭部や髪の毛の生え際、額、眉間、耳の周りなどで、ほかにも胸や背中、わきの下、へそ、足の付け根で同様の湿疹がみられることもあります。乳児期の脂漏性皮膚炎については「子ども・赤ちゃんの頭皮や顔にできる湿疹について」で取り上げます。
-
アトピー性皮膚炎(思春期・成人期)
アトピー性皮膚炎は全身の皮膚に症状が出ることがありますが、頭部に症状が出ることも多い疾患です。小児期で湿疹がよくみられる肘と膝の裏側などの腕や足に加えて、顔面や首、胸など上半身に症状が強く現れる傾向があり、眉の外側1/3が薄くなることもあります。乳幼児期と小児期のアトピー性皮膚炎については「子ども・赤ちゃんの頭皮や顔にできる湿疹について」で取り上げます。
頭皮・顔の湿疹の主な原因(要因)
頭皮や顔にできる湿疹の原因にはどんなものがあるのでしょうか。疾患ごとに紹介します。
-
接触皮膚炎
頭皮や顔で湿疹がみられる場合は、シャンプー、染毛剤、育毛剤、帽子、ヘアピン、化粧品、医薬品、日焼け止め、香水、メガネ、植物など接触源に触れることが原因です。
-
成人期の脂漏性皮膚炎
環境などによる皮脂成分や分泌の変化、発汗、偏食などによるビタミンB群の欠乏などが原因と考えられています。湿度が低い環境やストレスや疲労があると悪化することが多いです。
-
アトピー性皮膚炎(思春期・成人期)
アトピー性皮膚炎発症のメカニズムはまだ十分には解明されていませんが、皮膚のバリア機能が正常に働かないことやもともとの体質などに加えて、外部からの刺激も要因となっていると考えられています。外的要因としては、ダニやハウスダスト、皮膚に存在する菌(常在菌)、精神的ストレス、湿度などが挙げられます。特に思春期・成人期のアトピー性皮膚炎は精神的ストレスが悪化の要因として重要視されています。
湿疹の原因・仕組みについては、こちらの記事にも記載していますので、併せてチェックしてみてください。
頭皮・顔の湿疹の予防法
頭皮や顔の湿疹を予防するにはどんな方法があるのでしょうか。疾患ごとに解説します。
-
接触皮膚炎
病院で、金属、薬剤、植物などのアレルギー体質であるかの検査を受け、原因物質との接触を避けることが何よりも重要です。
-
成人期の脂漏性皮膚炎
余分な汚れや皮脂を取り除くため、刺激の少ない石鹸やシャンプーを使った洗顔、洗髪を行って、頭皮と顔を清潔に保つことが重要です。規則正しい生活を送ることも予防につながります。
-
アトピー性皮膚炎(思春期・成人期)
先に紹介したように、思春期・成人期のアトピー性皮膚炎では精神的ストレスで悪化することが多いので、精神的ストレスをためないような生活を心がけることが重要です。
湿疹の予防法については、こちらの記事にも記載していますので、併せてチェックしてみてください。
頭皮・顔の湿疹の対処法
頭皮や顔に湿疹ができてしまった場合、どのように対処すればいいのでしょうか。疾患ごとに解説します。
-
接触皮膚炎
原因物質との接触を断ち、すでに起きている症状については、皮膚科で処方される軟こうや抗アレルギー薬で対応します。
-
成人期の脂漏性皮膚炎
先に記載した予防法が対処法にもなります。石鹸やシャンプーを使って湿疹ができた部位を清潔に保ち、生活リズムを整えます。頭皮の湿疹でふけが出る場合は、抗真菌薬を含んだシャンプーが効果的です。皮膚科では患部の状況に応じて弱めのステロイドの塗り薬が処方されることもあります。
-
アトピー性皮膚炎(思春期・成人期)
まずは、専門医での治療とあわせて悪化を防ぐことが重要です。予防法でも紹介したストレスをためないことに加えて、室内を清潔に保つ、十分な睡眠をとる、お風呂の温度を低めに設定するといったライフスタイルの見直しがポイントとなります。
子ども・赤ちゃんの頭皮や顔にできる湿疹について
これまでは大人にみられる頭皮と顔の湿疹について解説してきましたが、子どもや赤ちゃんに特有の頭皮・顔の湿疹もあります。以下に紹介します。
-
口舐め病(舌なめずり皮膚炎)
乳幼児から小児によく発生します。口の周りをなめることによって湿疹ができる接触皮膚炎です。唾液や食べたものの刺激が原因となります。保湿剤を塗ることに加えて、マスクの着用でも口のまわりをなめることを予防できるでしょう。
-
乳児期の脂漏性皮膚炎
生後2週~4週ごろから髪の毛の生えている部分や眉の部分、額、鼻の周囲などが赤くなって黄色っぽいかさぶたができたり、ぶつぶつができたりします。見た目に反してかゆみは軽く、生後8~12カ月で自然に治ることが多い疾患です。
-
アトピー性皮膚炎(乳幼児期・小児期)
乳幼児期では、汗やよだれが付着しやすい頭部、顔、首などに症状が多く見られます。成長に伴って顔の症状は軽くなることが多いのですが、小児期に移行すると、特にわきの下や肘・膝の内側(曲げたときに重なる部分)などが赤くなり、かきむしることを繰り返していると、硬くゴワゴワした状態になります。かきむしることにより血や浸出液が出たり、かさぶた状に固まったりします。耳たぶの付け根が切れる症状を伴うことも多いです。
頭皮や顔の湿疹でよく見られるお悩みを解説(Q&A)
頭皮や顔にできる湿疹について、よくあるお悩みにお答えします。
-
頭皮湿疹になると、頭の痛みや頭痛が伴う症状はありますか。
湿疹によって頭痛が起こることはありません。患部がかゆくてかきむしることによって皮膚が傷つき、その傷が痛いということはありますが、これは頭痛ではありません。頭が痛いときは別の病気の可能性もありますので、内科を受診するようにしてください。
-
ずっと同じ化粧品やシャンプーを使っているのに、平気なときと、顔がかゆくなったり、ふけが出たりするときがあります。
睡眠不足や食生活の乱れ、ストレスなどによって肌のバリア機能が乱れ、そこに化粧品や花粉、ほこりなどの外的刺激が加わることによって脂漏性皮膚炎を発症することがあります。すでに出ている症状については薬などで適切な対処が必要ですが、ライフスタイルの改善で皮膚の状態がよくなることもあります。
-
生後2か月の赤ちゃんでも頭や顔に湿疹ができますか?
乳幼児期の脂漏性皮膚炎は生後2週くらいから症状が出ることがあります。湿疹ではないですが、新生児ニキビ(新生児痤瘡(ざそう))でも生後2か月くらいまでの間に頬を中心にニキビができます。こちらも、8か月以内に自然に治る場合が多いです。
監修:秋葉原スキンクリニック院長 堀内 祐紀先生
東京女子医科大学医学部医学科卒業後、都内皮膚科・美容クリニックを経て、2007年に秋葉原スキンクリニックを開院。日本皮膚科学会認定専門医、日本医学脱毛学会理事、Aケア協会アドバイザー。日本皮膚科学会、日本美容皮膚科学会、日本レーザー医学会、日本抗加齢医学会などに所属。