<知っておきたい>「しみ・そばかす」の正しい知識 (1)「しみ・そばかす」の原因・症状を解説 しみ・そばかすとは しみの主な種類(症状) しみ・そばかすの仕組みについて しみ・そばかすの主な原因(要因) しみ・そばかすと似た疾患(病名) 一度できるとなかなか消えない「しみ・そばかす」。年齢を重ねるほど数が増えやすくなりますが、なかには子どもの頃から悩まされるケースも少なくありません。紫外線の影響がクローズアップされがちですが、実はしみ・そばかすの発生にはさまざまな原因があるのだとか。皮膚科医監修のもと、くわしく解説します。 しみ・そばかすとは 「しみ・そばかす」はひとまとめに語られることが多いですが、その違いをご存じですか? まずは、多くの女性を悩ませるその正体と特徴についてお伝えしましょう。 用語解説 しみ・そばかすの正体は、表皮内で過剰に蓄積したメラニン色素。肌の色の濃さを左右するメラニン色素は、その量が多くなるほど肌の色が濃くなります。 「しみ」は遺伝的要因やホルモンの影響、紫外線などが関わって発生すると考えられており、妊娠を機にできる人も珍しくありません。一方、「そばかす」は後天的にできるしみとは異なり遺伝性が高く、色白の人に多く見られます。 しみとそばかすの違い しみとそばかすは発生の仕方に違いがあり、出現部位や形状から見分けられます。しみは狭い範囲にできることが多く、とくに額、頬、耳前部、に出現しやすいです。さまざまな色や形、大きさをとる色素斑で、形は不定形ながら境界ははっきりしています。 そばかすは、顔の中心や手、腕、肩、背部などに多発する直径1〜5ミリの不規則な形をした淡褐色〜黒褐色の小色素斑。メラノサイトの活性化によって3歳以降にでき、思春期に目立つようになります。 しみの主な種類(症状) しみと一口にいっても、その種類はさまざまです。主な種類と症状について見てみましょう。 そばかす(雀卵斑) 前述のとおり、顔の中心を主として腕や肩、背などの露出部に多発する小色素斑のこと。3歳以降の幼児期に発症し、思春期に顕著となります。 老人性色素斑 紫外線のダメージを受けた表皮細胞が、メラノサイトを刺激し続けることによってメラニンが増加して発生するしみ。淡褐〜濃褐色で、頬などの日の当たりやすい部分に多くできるとされています。遺伝子に異常をきたしたケラチノサイト(表皮細胞)が、メラニン生成のシグナルを異常に送ってしまうことが、主な原因だと考えられます。そのため、メラノサイトに異常がないにもかかわらず、メラニン生成が過多になりしみが発生します。 肝斑(かんぱん) しみの代表格である肝斑。30歳以降の女性の前額、側額、眉毛の上、頬、頬骨部などに左右対称に現れ、発症の男女比は圧倒的に女性が多いようです。褐色の色素斑で、肝臓の表面の紋様に似ているのが特徴。60歳を過ぎると自然に薄くなります。 炎症後色素沈着 ニキビや虫刺され、摩擦、火傷などによって炎症が生じ、メラニン生成を引き起こす炎症性サイトカインが放出され、その部位に色素沈着が起こること。炎症がおさまったのちに色素沈着をきたすのが特徴です。肌のターンオーバーを正常化させることで、自然に薄くなっていきます。 脂漏性角化症 中高年以降、ほぼすべての人に出現。ケラチノサイト(表皮細胞)の遺伝子の異常により、必要以上に細胞が増殖することで起こります。最初から正常皮膚色で盛り上がるものや盛り上がりのない色素斑から始まり、次第に隆起して茶褐色から黒色調の結節(しこり)を形成するものもあります。黒褐色調が強いと、基底細胞がんやメラノーマなどの悪性腫瘍との見極めが重要になります。 しみ・そばかすの仕組みについて 女性の肌に暗い影を落とすしみ・そばかす。一体、どのような仕組みで発生するのでしょうか。 肌が紫外線をはじめとした刺激を受けると、メラニンを生成しはじめます。メラニン色素の原料はチロシンという物質。チロシンがメラノサイトの中で酸化酵素チロシナーゼのチカラを借りることによって、メラニン色素が生成されます。 子どもの頃から浴びてきた紫外線の蓄積により、ケラチノサイトの遺伝子が異常をきたすと、メラノサイトが正常に働いていてもメラニン色素をつくりすぎてしまいます。 メラニン色素は私たちの肌の色を決定づける要素のひとつ。メラニンには2種類あり、黒褐色の色素がユーメラニン、黄色や赤色の色素がフェオメラニンです。ユーメラニンの比率が高いと肌や髪は黒っぽくなり、フェオメラニンの比率が高ければ肌は白く、髪は金髪になります。一般的にメラニンと呼ばれているものは、ユーメラニンとフェオメラニンの混合体のことを表します。 メラニン色素は顆粒状のメラノソーム内で量を増やしていき、一定量に達するとメラノソームごとケラチノサイト(表皮角化細胞:主に基底細胞)に受け渡されます。このように、メラニンが生成され、表皮上層に移動することによって、私たちの肌の色は濃くなります。 肌の色を濃くしたメラニン色素はターンオーバーによって排出されますが、表皮や真皮細胞の機能異常、新陳代謝の乱れや低下によって沈着することがあります。その色素沈着がしみ・そばかすと呼ばれるものです。 しみ・そばかすの主な原因(要因) しみ・そばかすの大敵といえば紫外線。しみ対策というと日焼け止めばかりに気をとられがちですが、実はいくつもの原因が考えられます。症状別に主な原因を見てみましょう。 そばかす(雀卵斑) 遺伝的要因で発生するため、後天的に発生するしみとは異なります。一般的に、色白で日焼けしやすい人に見られ、日本人をはじめとする黄色人種には少ないとされています。白人やブロンド、赤毛の人に多いのが特徴です。 老人性色素斑 遺伝子に異常をきたしたケラチノサイト(表皮細胞)が、メラニン生成のシグナルを異常に送ってメラノサイトを刺激し続けてしまうことが、主な原因だと考えられており、紫外線の当たりやすい部位に発生します。後天的なしみであり、中年以降に発生するのが一般的ですが、幼少期から多くの紫外線を浴びた蓄積の結果、多くの日本人では20歳ころから発生するケースが多くみられます。 肝斑(かんぱん) 遺伝的要因、性ホルモンの影響、紫外線、妊娠や内分泌の変調などが関わっていると考えられます。ホルモン異常が関わっていることが多く、紫外線で悪化します。 炎症後色素沈着 ニキビや虫刺され、火傷などの炎症により起こります。ナイロンタオルでゴシゴシこすったり、かきむしったりして炎症をおこした後に見られるケースも多いです。アレルゲンとする物質に触れることによってアレルギー性接触皮膚炎を起こし、かぶれがおさまった後に色素沈着を起こす事例もあります。 脂漏性角化症 加齢によって増えると言われており、近年の研究によると、遺伝子の変異が発症に関わっていることも明らかになってきました。ただし、同じく遺伝子の変異が着目される老人性色素斑とは異なり、必ずしもメラニン生成を伴うものではありません。シミのように見えるのは、角層が細胞の増殖により厚く積み重なり、周囲の皮膚と比べて濃く見えるためです。 遺伝的要因やホルモンバランス、紫外線などが主に挙げられましたが、ストレスもしみを促進するとされています。色素細胞と神経系には密接な関係があり、精神状態が不安定だとしみができやすいという説も。ストレスや睡眠不足、過労は老化を促す活性酸素を発生させる要因でもあり、活性酸素は遺伝子の変異を起こす原因にもなります。しみを増やさないためには、安定した日常生活を送ることが重要だといえるでしょう。 しみ・そばかすと似た疾患(病名) しみ・そばかすと思っていたものが、実は別の疾患だったというケースは少なくありません。適切なケアをするためにも、しみ・そばかすと似た疾患にはどんなものがあるのかを知っておきましょう。 女子顔面黒皮症 主に化粧品による色素沈着のこと。かぶれを何度か繰り返し、ゆるやかに発症する疾患です。赤みを伴う黒褐色に近い色で、ムズムズ感やヒリヒリするようなかゆみといった特有の炎症が起こります。 悪性黒色腫 メラノサイトがガン化して生じる悪性腫瘍。転移しやすく、難治性の腫瘍として知られています。成人以降に発生することが多く、非常に濃いしみで左右非対称のいびつな形をしており、色調に濃淡のムラがあるのが特徴です。10年程度かけて少しずつ大きくなり、痛みを伴います。悪性腫瘍は血管要素が増えるため、赤みがでることもあります。 ボーエン病 円~だ円形で湿り気のあるのが特徴です。はっきりした原因は不明ですが、ヒ素により発症することが確認されています。 監修:アーツ銀座クリニック 院長 市橋 正光先生 神戸医科大学卒業後、ロンドン大学皮膚科学研究所に留学。神戸大学医学部教授、再生未来クリニック・神戸の院長などを経て、再生医療を手掛けるアーツ銀座クリニックを開院。日本皮膚科学会名誉会員日本研究皮膚科学会会員、日本色素細胞学会(理事)、日本抗加齢医学会(監事)など多数の学会活動に従事する。 正しい情報を掲載するよう注意しておりますが、誤った情報があればご指摘ください 医療情報に関するご指摘はこちら からだの気になる症状別ガイド一覧へ戻る