<知っておきたい>「毛孔性苔癬(もうこうせいたいせん)」の正しい知識 (2)毛孔性苔癬の対処法や間違いやすい皮膚疾患について解説
小学校に上がる頃から思春期にかけて、二の腕や太ももなどに発生する毛孔性苔癬。決して珍しい病気ではなく、かつ基本的に治療の必要はありませんが、どうしても見た目が気になるという方は少なくないでしょう。
そこでここでは、皮膚科医の監修のもと、毛孔性苔癬の症状を緩和する方法をご紹介。さらに、毛孔性苔癬と間違いやすい皮膚疾患についても解説します。
毛孔性苔癬になったときの対処法
毛孔性苔癬は、10代の30~40%ほどに発生する皮膚疾患。決して珍しい病気ではなく、特別な治療が必要というわけでもありません。しかし、見た目の悪さが気になる方も多いことでしょう。
毛孔性苔癬の症状を緩和するには、次のような外用薬を塗るのが効果的とされています。
- サリチル酸ワセリン
- ビタミンA軟膏
- 尿素軟膏
- ビタミンD3軟膏
- ステロイド軟膏
なお、角栓を押し出そうとしたり、カミソリを当てるなどの刺激を与えたりすると跡になる可能性があるのでやめましょう。
毛孔性苔癬とそれに似た皮膚疾患との見分け方
毛孔性苔癬と症状が似た皮膚疾患はいくつかあります。毛孔性苔癬であれば治療する必要はありませんが、治療が必要な他の疾患を毛孔性苔癬と間違えてしまうと、対処が遅れて症状が悪化することもあるでしょう。そんな事態を防ぐため、ここでは毛孔性苔癬と似た症状が起きる疾患について見ていきます。
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ニキビ
ニキビは毛孔性苔癬と同じく毛包に発疹が起こるものですが、毛包が角化して起こる毛孔性苔癬に対し、ニキビは皮脂がつまることで起こります。皮脂が細菌の栄養になり、やがて炎症を起こして、赤い発疹ができるのです。状態がひどくなると、毛穴の中に膿がたまります。
ニキビは皮脂分泌が活発な思春期~20歳代にできやすいこと、発疹が赤いことなどが毛孔性苔癬に似ていますが、発疹の性質が異なります。毛孔性苔癬はザラザラとした触感の乾燥した発疹ですが、ニキビは発疹の中に皮脂があり、触れると痛みを感じることもあります。
また、毛孔性苔癬は多数の発疹ができるため、そこも見分けるポイントになるでしょう。
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光線過敏症
化粧品や薬剤、食品などから皮膚に取り込まれたクロモフォアという物質が、紫外線を浴びることで反応し、皮膚に発疹やむくみ、水疱、びらんを起こす疾患。程度がひどい場合は毛孔性苔癬と間違えられることはまずありませんが、アレルギー症状が軽いと、似たような発疹が出ることがあります。
ただし、光線過敏症の発疹は、毎年紫外線が強くなる春や夏に発生する点に特徴があります。毛孔性苔癬はシーズンによって皮膚の状態が変わることはありません。
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マラセチア毛包炎
思春期の男女の背中によく起こる皮膚疾患で、赤みを帯びた小さな発疹(2~3mm)がたくさん発生します。皮膚の常在菌であるマラセチアが増殖することで起こるもので、毛穴が拡大し角栓ができるため、毛孔性苔癬と間違われることがあります。
しかし、マラセチア毛包炎は、多くの場合春と夏に発症します。特定の時期に発症するかどうかが、毛孔性苔癬との見分けるポイントになります。
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色素沈着
肌の表皮内部にメラニン色素が過剰に蓄積することで、肌にシミやそばかすなどができることを、総称して色素沈着といいます。毛孔性苔癬にも色素沈着が起こる場合がありますが、通常の色素沈着には発疹を伴わないため、見分けやすいといえるでしょう。
毛孔性苔癬にまつわるよくある疑問(Q&A)
ここからは、よく聞かれる毛孔性苔癬にまつわる疑問について、Q&A形式で回答していきます。
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塗り薬を使う以外に毛孔性苔癬の治療はある?
主に美容皮膚科では、塗り薬以外の治療も行っています。例えば、専用の酸性薬剤を患部に塗布して角栓除去する、ケミカルピーリング。発疹や赤みを一時的に改善することが可能ですが、効果を持続させるためには、定期的に施術を受ける必要があります。また、レーザーやダーマスタンプを使って、肌の再生能力を活性化する治療法もあるようです。
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ボディスクラブは毛孔性苔癬の予防に効果的?
ボディスクラブは、毛孔性苔癬の予防には効果がありません。むしろ刺激を与えすぎると、症状が悪化したり、炎症や色素沈着の原因になったりすることも…。過剰なボディスクラブの使用はもちろん、掻きむしったりカミソリを当てたりといった、患部に強い刺激を与える行為は避けてください。
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毛孔性苔癬の改善には保湿が大切って本当?
毛孔性苔癬は、乾燥によって悪化するといわれています。つまり、“症状を改善するため”ではなく“今よりも悪い状態にしないため”には、保湿が効果的といえるでしょう。
監修:池袋西口ふくろう皮膚科クリニック院長 藤本 智子 先生
浜松医科大学医学部医学科を卒業後、東京医科歯科大学皮膚科に入局。その後同大学の助教、多摩南部地域病院、都立大塚病院の皮膚科医長を経て、池袋西口ふくろう皮膚科クリニックを開院。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。