<知っておきたい>「痔(じ)」の正しい知識(2)「痔(じ)」の予防・対処法について解説 痔の予防法 痔の対処法 痔に関して気になるお悩み(Q&A) 痔かもしれない!?セルフチェックしてみよう 痔にならないように予防する方法はあるのでしょうか。また、痔になってしまったとき、どのように対処すればいいのでしょうか。大腸肛門病専門医の監修のもと、くわしく解説します。気になる痔のお悩みにも専門医が回答しています。 痔の予防法 痔にならないためにはどんなことに気を付ければいいのでしょうか。一般的な予防法をご紹介します。 便秘や下痢にならないような生活 <知っておきたい>「痔(じ)」の原因・症状で触れたように、便秘や下痢が裂肛(切れ痔)や肛門周囲膿瘍の原因であるという報告がありますので、予防には便通がいい状態を保つことが大切ということになります。また、重いものを扱ったり、長時間座っていたりする職業の人に痔核が多い、ベジタリアンでない食習慣の人に痔核が多いという報告があります。以下のようなことに気を付けましょう。 水分と食物繊維の積極的な摂取 お酒を飲みすぎない 精神的ストレスを溜めない 肉体的に疲れないようにする 体の冷えを避ける 長い時間座りっぱなしの状態を避ける 適度な運動を行う 排便習慣の改善 排便時にりきむ人、トイレに長時間座っている人は痔核になりやすいという報告がありますので、便意を感じたらすぐにトイレに行って、りきみすぎず短時間で排便するように心がけましょう。肛門の衛生を保つことも大切です。 痔の対処法 次は痔になってしまったときの対処方法を痔の種類別に紹介します。いずれの場合でも、自分で対処しすぎず、早めに病院を受診することをおすすめします。 痔核(いぼ痔) 痔核は「内痔核」と「外痔核」に分けられ、さらに内痔核は痔核の大きさによってグレードⅠ~IVに分類されます。グレードIIIとIVの痔核は、外科的な治療をせずに改善することは難しく、根治を希望する場合は基本的に外科的治療が必要になります。 対処の基本は予防と同様で、長時間座りっぱなしの状態や冷え、ストレスを避け、飲酒を控え、水分と食物繊維を積極的に摂取するようにします。排便時も短時間でりきみすぎずに済ませるようにします。座浴(座った状態でお尻だけお湯に浸かるようにすること)や入浴で患部を温めることも有効です。 薬は腫れ、痛み、出血の緩和に効果が見られますが、一定期間使用しても痔核自体がなくなるわけではないので限界があります。 外痔核の場合は、痔疾患軟膏や座浴・入浴を2~4週間続けることで腫れや違和感が軽くなります。出血が続く場合や痛みが強い場合は外科的手術を行うことがあります。 内痔核のグレード 痔瘻(穴痔) 痔瘻の自然治癒はまれで、基本的には手術が行われます。痔瘻になる前の段階の症状を「肛門周囲膿瘍」といいますが、肛門周囲膿瘍の場合も、患部を切開して膿を排出する治療を行います。 裂肛(切れ痔) 裂肛の原因の多くが便秘や下痢などの排便障害なので、便通の調節が重要です。便秘に対しては、肉類を食べ過ぎず、食物繊維を十分に摂取します。 また裂肛では痛みや、肛門部に「見張りいぼ」とよばれるいぼができて肛門の衛生を保てないことも多いので、入浴や座浴を行って衛生を保つようにします。 これらの対処で効果がみられなかった場合や、日常生活に支障が出るような強い症状が出ている場合、裂肛を繰り返して肛門が狭くなってしまった場合は手術を行います。 痔に関して気になるお悩み(Q&A) 痔についての気になるお悩みにお答えします。 痔になったら何科の病院を受診すればいいのでしょうか? 肛門科、肛門外科の病院を受診しましょう。外科や消化器外科で対応してくれる場合もあります。日本臨床肛門病学会のホームページで、肛門科専門医の先生が都道府県別に載っていますので、近くにいる専門医を受診するのがおすすめです。 女性です。受診が恥ずかしいのですが… 痛みや出血を我慢していると症状が悪化して手術が必要になったりすることがありますので、自己判断はしすぎない方がいいです。診察は横向き(側臥位:そくがい)で行い、患部以外に布をかけてくれる病院が増えてきています。 また、女性の患者さん専用の受付時間や待合室を設けている施設や、女性スタッフ、女性医師が対応してくれる肛門科もありますので、情報を集めてみてください。 一度治療した痔が再発することはありますか? 治療後も再発する可能性はあります。生活習慣や食生活の乱れなどで便通が悪くなったりすると再発の可能性は高まります。予防法のところで記載した項目に注意して生活することが重要です。 手術になった場合、入院しなければいけないのでしょうか? 基本的には入院治療が必要となりますが、日帰り手術が可能な疾患もあります。手術前の検査を行い、日帰り手術が行える状態であると判断され、ほかにも、術後の処置が患者自身で行えるかどうか、緊急時にも対応できるかどうか、などの条件をクリアした場合に日帰り手術が可能になります。手術中はしっかり効いて、かつ手術後には帰れる状態になるように麻酔をかけて手術を行い、術後は1~2時間程度休むと帰宅できるようになります。 ただし、すべての痔疾患で日帰りができるわけではなく、患者の理解や医療者側の状況、地域の医療事情などによって変わってきます。 痔かもしれない!?セルフチェックしてみよう お尻の症状で気になることがあるときに、セルフチェックしてみましょう。 このセルフチェックはあくまで参考程度にして、不安なことがあれば病院を受診しましょう。 排便時の痛み、出血。出血は排便後すぐ止まり、色は鮮やかな赤色 疑われる疾患 内痔核、裂肛、直腸ポリープ(直腸がん) 肛門周辺の突然の痛みを伴う腫れ、赤み、発熱 疑われる疾患 肛門周囲膿瘍 肛門周辺の腫れ、痛み、膿が出る 疑われる疾患 痔瘻 排便時の出血、色はどす黒い。粘液が混じっている 疑われる疾患 大腸がん 排便時に血液と粘液が出る、下痢を伴う 疑われる疾患 潰瘍性大腸炎、クローン病 強い腹痛を伴った軟便・下痢、血便 疑われる疾患 虚血性大腸炎 腹痛もなく、突然赤黒い血が下痢のように出る 疑われる疾患 大腸憩室からの出血、大腸がん タールのように黒っぽい便が大量に出る 疑われる疾患 胃・十二指腸潰瘍、胃がん 肛門周辺にカリフラワーのようないぼができる、性器周辺にも同様の症状がある 疑われる疾患 尖圭コンジローマ 監修:寺田病院 院長 寺田俊明先生 東京医科大学卒業後、三井記念病院外科研修医を経て亀田総合病院消化器科にて内視鏡をはじめ多種にわたる検査を習得。東葛辻仲病院を経て、現在寺田病院理事長・院長。 寺田病院HP 正しい情報を掲載するよう注意しておりますが、誤った情報があればご指摘ください 医療情報に関するご指摘はこちら からだの気になる症状別ガイド一覧へ戻る