<知っておきたい>「フケ」の正しい知識 (1)「フケ」の原因・症状を解説
フケは、健康な人であれば誰にでも生じる生理的な現象ですが、量が増えたり目立つ大きさになったりすると気になるものです。また、なかには病気が原因でフケが生じることもあるため、フケについて正しい知識をおさえておく必要があります。フケの一般的な原因や症状について、皮膚科医監修のもと解説します。
フケとは
まずは、フケの定義について確認しておきます。
フケとは
フケとは、頭皮からはがれ落ちた角質片のこと。頭皮のターンオーバー(肌の生まれ変わり)の際に押し出された古い角質がフケにあたります。肌から出る垢(あか)と同じようなもので、通常は皮脂や汗、ホコリが混ざっています。
健康な人であれば誰にでも生じるものですが、量が増えたり大きくなったりすると、大量のフケが肩にのる、髪に付着しているのがはっきり見えるなどして、フケの存在がかなり目立つようになります。こうした状態を「フケ症」と呼びます。
フケの種類
フケは、含まれる皮脂の割合によって、カサカサした「乾性」とベトベトした「脂性」の2つに大きく分けられます。それぞれの特徴についてくわしくみていきます。
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乾性フケ(カサカサ)
乾燥した頭皮で生じやすく、乾いていてパラパラした細かい形状のフケです。乾燥肌の人に多いといわれています。洗浄力の強いシャンプーを使ったり、洗う回数が多かったりして、頭皮に必要な皮脂が不足することでも生じやすくなります。
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脂性フケ(ベトベト)
乾性フケのようにパラパラと落ちることはなく、髪の根元のほうにべったりと付着しているフケです。油っこい食事や不十分な洗髪のほか、ホルモンバランスの乱れなどが原因で、頭皮の皮脂分泌が過剰になることで出やすくなります。
フケが出る仕組みと原因
フケはどのようにして生じるのでしょうか。乾性フケと脂性フケ、それぞれの原因とあわせてみていきましょう。
フケが出る仕組み
頭皮は、絶えずターンオーバーを繰り返しています。表皮の一番下にある基底層で「表皮細胞」が生まれ、上へ上へと押し上げられて角層まで到達すると、最後はフケとなってはがれ落ちていきます。これが、フケができる仕組みです。
通常であれば洗髪時に洗い流されますが、なんらかの原因で頭皮のターンオーバーが乱れると、フケが大きく目立つようになったり量が増えたりして、フケ症と呼ばれる状態になります。
フケの主な原因
フケは誰にでも出るものですが、フケが目立つほど増える原因には生活習慣が深く関係していると考えられています。たとえば、食生活の乱れや不規則な生活、睡眠不足、ストレス、疲労などがあげられます。こうした生活習慣がホルモンバランスの乱れを招き、頭皮のターンオーバーに影響を与えてフケの発生につながることも考えられます。
また、上記の原因以外にも、乾性フケと脂性フケのそれぞれにみられる原因があります。フケのタイプ別にみていきましょう。
乾性フケの主な原因
頭皮が乾燥すると、乾性フケが出やすくなります。頭皮の乾燥を招く原因としては、次のようなものがあげられます。
- 洗髪のしすぎ
- 洗浄力の強いシャンプーの使用
- 乾燥する季節
- 紫外線によるダメージ
- 加齢による頭皮のうるおい不足
脂性フケの主な原因
脂性フケが生じる頭皮は、皮脂が過剰に分泌されている状態です。とくに注意したいのが、マラセチア菌というカビの一種。カビといっても誰の皮膚にでも存在する菌(常在菌)ですが、皮脂をエサとして増殖することがわかっています。マラセチア菌は、皮脂を分解して遊離脂肪酸を増加させ、頭皮のターンオーバーを早めてフケの量を増やしてしまいます。
ほかにも、次のような原因で脂性フケが増えると考えられています。
- 洗髪時の汚れ残り
- シャンプーなどのすすぎ残し
- ワックスなどのヘア剤をつけたまま寝る
- 汗をよくかく
- 帽子やヘルメットなどで頭が蒸れる
フケ症と脂漏性皮膚炎の違いは?
脂漏性皮膚炎になると、フケが多くみられることがあります。では、フケ症との違いはどこにあるのでしょうか。脂漏性皮膚炎の定義とあわせてみていきます。
脂漏性皮膚炎とは
顔や頭、わき、陰部など、皮脂の分泌が活発な場所に現れる病気。カサついて角質が目立つ肌に、赤みのある発疹がみられます。頭皮に生じた場合はフケが多く出て、頭皮が赤くなります。
乳児型の脂漏性皮膚炎は自然に治っていきますが、成人型の場合は、症状が続いたり再発を繰り返したりします。
フケ症と脂漏性皮膚炎の違い
フケが出るのは生理的な現象であり、フケ症はフケが目立って多い状態を指しますが、脂漏性皮膚炎になると病的な段階へと進みます。脂漏性皮膚炎では、フケは症状の一部であり、生活習慣の見直しとともに必要に合わせてステロイド外用薬などの薬剤を用いた治療を行う場合もあります。
どちらも、大きな原因としてマラセチア菌との関連性が指摘されています。フケがなかなかおさまらない場合や、フケ以外の症状がみられる場合は、脂漏性皮膚炎をはじめとする病気を発症している可能性があるため、早めに皮膚科を受診しましょう。
脂漏性皮膚炎以外でフケがみられる主な病気
脂漏性皮膚炎以外の病気でも、症状のひとつとしてフケがみられることがあります。主なものは次のとおりです。
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尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
尋常性乾癬でもフケがみられますが、症状が出るのは頭皮だけではありません。炎症と角化(角質化)が主体の病気で、赤くなった肌の上に、銀白色の角質が層状に重なっている状態の肌がみられます。初期の段階では、脂漏性皮膚炎と区別するのは非常に困難です。
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アトピー性皮膚炎(思春期・成人期)
アトピー性皮膚炎でも頭皮にフケがみられます。アトピー性皮膚炎発症のメカニズムはまだ十分には解明されていませんが、皮膚のバリア機能が正常に働かないことやもともとの体質などに加えて、外部からの刺激も要因となっていると考えられています。
外的要因としては、ダニやハウスダスト、皮膚の常在菌、精神的ストレス、湿度などがあげられます。とくに思春期・成人期のアトピー性皮膚炎は、精神的ストレスが悪化の要因として重要視されています。
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頭部白癬(しらくも)
最近では、柔道などのスポーツ選手で感染するケースが増えています。発症すると楕円状に髪の毛が抜けたり発疹ができたりするほか、フケのようなものがみられることもあります。
監修:秋葉原スキンクリニック院長 堀内祐紀先生
東京女子医科大学医学部医学科卒業後、都内皮膚科・美容クリニックを経て、2007年に秋葉原スキンクリニックを開院。日本皮膚科学会認定専門医、日本医学脱毛学会理事、Aケア協会アドバイザー。日本皮膚科学会、日本美容皮膚科学会、日本レーザー医学会、日本抗加齢医学会などに所属。