<知っておきたい>「口角炎・口唇炎」の正しい知識 (1)「口角炎・口唇炎」の原因・症状について解説
顔の中でも特に皮膚が薄くて敏感な唇。その唇の代表的トラブルが、口角に亀裂が入って痛みが出る「口角炎」と、唇全体に炎症や湿疹が発生する「口唇炎」です。そもそも、口角炎・口唇炎はどうして起こるのでしょうか。皮膚科医監修のもと、くわしくご紹介します。
口角炎・口唇炎について
口元の炎症や痛みに悩まされる口角炎・口唇炎。まずは、口角炎・口唇炎の症状、その違いについて解説していきます。
口角炎とは
口角炎は、口角に炎症が起き、唇の端が赤く腫れた状態になり、皮がむけたり、かさぶたになったりする病気です。口角炎になると、唇が乾燥する、深く亀裂するなどの症状もあらわれます。発話や食事の際、大きく口を開けると口角が裂けるため、痛みをともないます。
口唇炎とは
口唇炎は、唇全体に炎症や亀裂が起こる病気です。唇が全体的に乾燥し、皮がむけたり、唇が腫れたりし、かゆみをともなう場合もあります。
口角炎と口唇炎の違い
口角のみに症状が出ている場合は口角炎、唇全体に症状がみられたら口唇炎、というのが大まかな見分け方です。ただ、これらの病気を併発している可能性もあるため、あくまでこの見分け方は一時的な目安とし、症状が長引く場合は医師に相談しましょう。
口角炎・口唇炎と似ている疾患(病気)
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口内炎
口内炎は、頰の内側や歯肉、舌などの口の中、口の粘膜に炎症が起こる病気です。潰瘍や水疱がみられ、お子様から高齢者まで幅広く発症します。口の中を誤って噛んでしまい発症するケースもあれば、疲労や免疫力の低下、ウイルスや細菌の繁殖、ビタミンなどの栄養不足、アレルギーによる炎症など、原因はさまざまです。
最も多いのがアフタ性口内炎で、ウイルスや細菌、ストレスなどが原因といわれています。初めは粘膜に小さな白いただれができ、その周りが赤く腫れて痛みます。一度治まっても再発することが多く、再発性アフタともいわれます。少しでも早く炎症を鎮めるには、刺激の強い香辛料や熱い食べ物、タバコ、アルコールを控えたりするなど、食生活に気を配ることが効果的といえます。
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口唇ヘルペス
口唇ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスの感染によって、唇や口の周りに小さな水疱ができる病気です。通常、初感染で症状が出ることは少なく、過去に感染し、神経節にひそんでいたウイルスが、かぜや疲労などで免疫力の低下したときに再活性化して発症することがほとんどで、しばしば再発します。
唇やその周辺にピリピリ、チクチクした違和感や熱感、かゆみといった症状が出ます。1週間ほどで乾燥し、かさぶたになって自然に治ることもあります。また、乳幼児や免疫力の低下している人では、初感染のときに発熱し、多数の水疱にただれや出血を伴う「ヘルペス性歯肉口内炎」などの強い症状が出ることがあるので、注意が必要です。
口角炎・口唇炎の種類と症状
原因が多岐にわたる「口角炎・口唇炎」。その種類とそれぞれの症状について解説していきます。
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口角炎
口角炎は一般的に細かい分類はされていませんが、カンジダ菌が原因のものを「カンジダ性口角炎」と呼ぶことがあります。口角に白色の苔状のものがあらわれるのが主な症状です。カンジダ菌は皮膚の常在菌の一種であるため通常は問題ありませんが、免疫力の低下などの理由で増殖し、発症にいたります。
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口唇腫脹
突然、唇が腫れる病気です。蕁麻疹に伴うもの、遺伝性の血管性浮腫、慢性に経過する肉芽腫性口唇炎があります。
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接触口唇炎
何らかの物質に接触し、それが原因で唇に炎症が起きる病気です。化粧品・洗顔料などに含まれる刺激性物質が発症原因と考えられ、リップや口紅を日常的に使用する女性の方が男性よりもかかりやすいといわれています。食べ物や金属へのアレルギー反応が原因の場合もあり、柑橘類、ナッツ類、パイナップル、マンゴーや歯科金属等がその一例に挙げられます。
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剥脱性口唇炎
唇の皮が繰り返してはがれ続ける病気です。唇が極度に乾燥している状態で、大人より子供に多くみられます。唇を頻繁になめると剥脱性口唇炎を招くので、「舌なめずり口唇炎」と呼ばれることもあります。
口角炎・口唇炎の主な原因
最後に、口角炎・口唇炎の原因について解説します。事前に理解することで、生活習慣を見直しましょう。
そのほか口角炎を引き起こす原因として以下の状況が考えられます。
口角炎の主な原因(要因)
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カンジダ感染
免疫力の低下をはじめ、高齢者の場合は、真菌であるカンジダ菌の感染により口角炎になることがあります。カンジタ菌は人間の体内にもとからいる菌で、通常の状態であれば口角炎にはいたりません。しかし免疫力が低下することで、皮膚が菌の侵蝕に負けてしまい、口角炎が起こりやすくなります。
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ストレス・疲労
過度のストレスは免疫力の低下を招き、免疫力が低下するとカンジダ菌が増殖しやすくなります。
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栄養不足(ビタミンB2、B6、鉄分)
ビタミンB2、B6、B12の不足で口角炎が起こりやすくなります。ミネラルの不足も原因に考えられ、鉄分不足の場合は舌炎や爪の反り返り、亜鉛不足の場合は味覚障害や脱毛などの症状もみられたりします。
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全身性の疾患、薬剤の使用
糖尿病、肝疾患、HIV感染症、副腎皮質ステロイド内服や免疫抑制剤による治療中は、口角炎が起こりやすくなります。
そのほか口唇炎を引き起こす原因として以下の状況が考えられます。
監修:藤田医科大学病院 皮膚科 鈴木明子先生
帝京大学医学部卒業後、同大皮膚科、順天堂大学浦安病院皮膚科を経て、2015年から現職。日本皮膚科学会専門医。