interview

女性が社会で感じる悩みや
違和感を変えていきたい

ハヤカワ五味さんが
今の「妊活」について
思うこと

学生時代に胸が小さな女性のための下着ブランドを立ち上げ、2019年3月には生理をポジティブに捉えるためのプロジェクトを発足させるなど、女性特有の悩みに寄り添った活動をされているハヤカワ五味さん。今までなんとなく気づいていても誰も言えなかった世の中の違和感を変えていこうとする姿に、多くの女性たちが勇気付けられています。そんなハヤカワさんが今、妊活について感じていることを伺いました。

  • 赤ちゃんができなくて悩んでいる人は多いのに、見過ごされている印象があります

    • ―妊活について、日本の状況と今後の課題についてどう思われますか?

      授かり婚はおめでたいことなのでオープンな場で語られやすいですが、妊活や不妊治療など子供ができない場合は公に語られないケースが多い。見えていないから気づかないけれど、授かり婚と同じかそれ以上に妊娠ができなくて悩んでいる人も多いということが知られていないように思います。
      社会が変わってきていて、経済的にも家庭をふたりで支えているところが多いですよね。それなのに、妊娠出産だけどちらかひとりのものになるのであれば不思議ですよね。私としては、一家を支える共同体として、妊活についてもふたりで考えていくべきだと思います。

  • 男性は構造的に情報が回って来づらく、男女にギャップを感じますね

    • ―不妊の悩みは、言わなければ気づかれにくいところがありますね。

      そもそも男性に「子供は簡単にできる」と思っている人が多いなと感じます。おそらく「避妊しない=妊娠する」という強い刷り込みからだと思うので、希望しない妊娠を避けるという点では素晴らしいことなのですが。先日、30過ぎの未婚の友人男性が「俺も子供生まれたら〜」と、当然のように子供ができる前提で話していることに驚きました。彼にとっては「老いること」と同じくらい当然のこととして「子供はできるもの」と考えているんですよね。生涯未婚率も男性だと25%近いので、まず結婚できる・する前提というのも不思議ですが。その点、女性はキャリアと妊娠・出産が切り離しづらいこともあり、意識し始めも早く、妊活をしている友人から苦労話を聞く機会もあるからでしょうか、自分の周りでもシビアな考えの人が多い傾向はありますね。 

    • ―では妊活についての情報は、どこから集めるのがいいのでしょうか。

      妊活情報にまず触れるきっかけになるのは、受動的にでもそういった情報が流れてくるSNSなどが多いのかなと思います。ただSNSの性質上、ネガティブな意見が多くなるし、プライベート性の高い妊活についてはなおさら事細かく発信する人は少ないもの。インターネットで探すより、まずは身近な友人知人の話を聞くほうが信頼度も高いしリアルです。出産経験のある周りの友人に「出産したいと思ってからどれくらい時間がかかったのか」「どのようなことから取り組んだか」など体験談を聞いてみてもいいと思います。

    • ―妊娠や妊活をしている男女についてイメージ調査をしたところ、ここでも男女間にギャップがありました。
      妊活女性に対しては「辛そう」というネガティブなイメージの反面、妊活男性に対しては「家族思い」が上位でした。

      それは男女で妊活の定義がズレているからでしょうか。男性の妊活は「子供が欲しいね」と話すところからという気がするのですが、女性は「不妊治療に通う」ことに焦点が当たっている感じがして、大変そうに見えてしまうのかもしれないですね。生活習慣の改善や体を冷やさないことも妊活と言われていますが、それは日常的に母から言われてきたようなことなので、習慣化していると思います。このあたりも妊活だと考えてもいいのであれば、妊活の心理的ハードルを下げられそうですね。

    • ―妊活に対する心理的ハードルとして、男女ともに金銭面への不安を挙げる方が多く、
      男性は27%に対し女性は過半数という結果になりました。

      それは収入差の問題かもしれませんね。女性が活躍する社会になりつつありますが、とはいえ全国の女性平均年収は約300万円で、男女で200万円以上の収入の差があります。となると、妊活の費用が100万円だったとして、その価値は男女で感じ方が変わると思います。また、女性は妊活に取り組むために仕事をセーブしなければならない場合もあり、収入面も不安定になることでよりシビアに考えてしまうのかもしれません。

    • ―確かにそういう側面はあるかもしれませんね。妊活男性は次点に「知識不足」が挙がりました。

      先日、知人男性と話したときに「妊活だけでなく妊娠出産について、男性同士ではあまり話さない」と聞きました。男性の場合、自身が妊活をしていると表明することは、プライド的に言いづらいのかもしれませんね。ただ、実際は、生活習慣で改善できる部分も多く、妊活すなわち(生殖)能力が低いという訳ではないので、そこも理解されてほしいなと思います。多くの男性が、妊活について話す機会が少なく、情報を集める必要性も感じにくい状況にあるとしたら、少しずつでも変えていく必要がある問題だと思います。身近な男性でも、35歳を超えていても、自分の年齢が上がることで不妊確率が上がることを知らないという人がいます。まずはパートナー同士で話すなどして、少しずつ会話ができるようになればいいですよね。

  • 妊娠・出産について予定がなくても早めに知ることで、後々の選択肢の幅が広がります

    • ―妊活前の若者世代にも調査をしていますが、妊活に対してポジティブなイメージを持っていました。

      私たちの世代は、比較的、話しやすい空気になっているかもしれないですね。なぜなら「こうしないといけない」「こうすべき」という正解やテンプレート的な考えが減ってきていて、選択肢も多いからだと思います。

    • ―若者世代の妊活についてはどうお考えでしょうか?

      20代で妊活や不妊治療を行っている人が周りにもいますが、調査でも、3人に1人が20代後半から妊活をスタートしているという結果が出ていて、驚きました。私自身、まだまだ知らないことが多いと感じたので、もっと知識を増やしたいと思っています。「産むか産まないか」と「知るか知らないか」は別の話ですしね。

    • ―現在、ハヤカワさんご自身が妊活のためにしていることはありますか?

      そうですね。キャリアは自分の努力で後天的にも築くことができると思うのですが、妊娠出産は時間的に不可逆性の高いことだと思っています。自分の体の状態を知るとか、妊娠するのにどのくらい時間がかかるものなのか、妊娠した後に何をしなくてはいけないのかについて、あらかじめ知っておくことが第一歩だと考えています。今は、パートナーと話し合ったり、本を読んで知識を取り入れたり、周りに話を聞いたりしています。

    • ―若者世代が妊活をするときの、最初の心構えなどはありますか?

      妊娠出産に関しては、自分でハンドリングができないことがあるということです。妊娠出産をした人に聞いて思ったのですが、キャリアはある程度想定できるし、計画ができます。けれど妊娠において「確実」ということはないので、予測通りにいくとは限りませんよね。予定通りに運ばないことが当たり前だと知って、肩の力を抜いて取り組むといいと思います。

  • 身近なコミュニティから妊活の共有ができるようになるといいですね

    • ―親世代との関わり方についても伺いたいのですが、ハヤカワさんが妊活をした場合、
      親とはどういったコミュニケーションをしていきたいですか?

      親も専門家ではないので、妊活のアドバイスをもらいにいくということはしないと思います。ただ、出産後のことまで考えると親のサポートがある方がとても助かるので、相談や報告をしながら、戦略的に巻き込んでいきたいと思っています。医療技術の進歩などもあり、親世代と今の世代の妊活とでは知識にもギャップがあるのではないかと思います。世代間の差を埋める意味でも現代の妊活について日常的に話しておきたいと考えています。

    • ―親世代との知識の共有は、どうするとスムーズにできると思いますか?

      まずは、今の妊活について知ってもらうことからだと思います。「友達が妊活していて、今はこういうことをするらしいよ」などと世間話をしたり、妊活白書のような冊子を渡して話すのもいいかもしれないですね。「現代の妊活」をテーマにしたドラマなどがあれば、一緒に観たりできるんですけどね。

    • ―ロート製薬では夫婦が協力して行う「ふたり妊活」だけではなく
      今年からは親世代や社会全体で妊活を支え合う「妊活シェアリング」という考え方を提唱しています。
      どうすれば浸透していくと思われますか?

      前提として、今の日本は超個人主義的な社会になっています。その中で子供を産むことは、とてもハードなことだと思っています。今すぐ「社会全体で妊活をサポートしていこう!」と変化をもたらすのは難しいのかもしれませんが、まずは会社や自治体などの身近なコミュニティから始めてみるのがいいかもしれないですね。

    • ―実現のために具体的に必要なことは何だと思いますか。

      周りが「誰かの人生の価値観を尊重しよう」という意識を持つこと、また本人が「自分の意志を早めに共有する」ことですね。早い段階で共有ができていれば周りも対策を打つことができるし、本人の心理的安全にもつながるので、みんなにとってメリットがあると思います。

    • ―まずは身近なコミュニティで、妊活を共有しやすい雰囲気を作ることから。

      上司の立場になって思ったのは、制度で解決できることには限界があるということです。例えば、いくら制度上産休が取りやすかったとしても、批判的な空気であれば取りづらいですよね。そこで、誰かが妊娠した時に喜ばしいことだという態度をとったり、普段からコツコツと妊娠出産に肯定的なことを示すのが管理職など職場のキープレイヤーとして重要だと思っています。男女ともに、妊活に対して話せる人はカッコいいという風潮ができてくるといいなと思います。

ハヤカワ五味
1995年東京生まれ、多摩美術大学卒業。株式会社ウツワ代表取締役。大学入学後にランジェリーブランド《feast》2017年にはワンピースの《ダブルチャカ》を立ち上げ、Eコマースを主として販売を続ける。2018年にはラフォーレ原宿に直営店舗《LAVISHOP》を出店。2019年より生理用品のセレクトショップ《illuminate》を始動。

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