―肌って、服を着ていても、何かを直接触っていなくても、常に外気と触れ合っているよねと編集部で話をしていました。相良さんは茅葺き職人だからこそ、言葉以外のものから受け取るメッセージがより多いのでは?と思って、話を聞きたいなと思いました。
まさに、そうですね。メッセージをたくさんもらって受け取っているように思います。「身体」って、ただの自分の肉体のことだけじゃないように思うんです。もっと広がった感覚で「自分の身体」を捉えることができるなぁと思っています。
例えば、田舎で暮らしていると、草刈りや庭の世話が日常の一部になるんです。「手入れ」ですね。手を入れていく。すごく行動がイメージしやすいよね。手を入れていく、触れていくってことだと思います。それを繰り返していくうちに、なんだか不思議な感覚が芽生えてきます。庭の草や地面が、自分の肌の延長みたいに感じられるんです。「地肌」って言葉、まさにそれを表している気がします。茅葺き屋根を葺いているときも、そうですね。里山の景色の一部になっているなぁと感じることがあります。地域自体が大きな身体と見立てると、自分はその肌の一部を大事に手入れしているような感覚です。
毎日、自分の肌を洗ったり触れたりしていると、小さな変化に気づくものです。「あれ、ここにほくろができたな」とか、「今日は肌がちょっと乾燥してるな」とか。それと同じように、庭や地域も日々観察していると、小さな変化に気づくようになります。「あ、あの草また伸びてきた」「この花、今年も咲いたな」って。そういう積み重ねで、自然と大切に思えるようになるんですよね。
この感覚って、自分の身体だけにとどまらないんです。庭や地域、見える山や草むらまで含めて「自分の一部」だと思えるようになる。不思議だけど、心地いい感覚。まるで自分の肌がどんどん広がっていくみたいな。