今年(2024年)の10月にDutch Design Weekに参加したのですが、そこでは「触れる」をテーマに展示を行いました。盲ろう者で触覚デザイナーの田畑快仁(はやと)くんとミラノ在住のデザインリサーチャーで手話通訳士の和田夏実さんと一緒に「MAGNET」というチームを組んでいて、日本とイタリアとオランダという三拠点で準備を進めていたんです。
目を閉じて同じテクスチャーのカードを探す「たっちまっちカード」など、二人とはこれまでもプロダクト制作をしたことがあり、活動や対話を通じて「触覚こそ最も情報量の多い感覚のひとつなんじゃないか」と気付いたことが、今回のテーマ設定のきっかけになっています。「たっちまっちカード」のようなユニバーサルな感覚、触覚的な視点で楽しめる遊びもそうですし、ハグや握手といった肌のふれあいから得られる情報は、言葉や手話でやりとりする以上にゆたかなんです。
二人と話していると、同じ世界で生きているはずなのに、なんだか驚きの連続で。新しい視点が自分の中に入ってくることで、今まで気づかなかったことにも想像力が働くようになって、新しい世界の扉が開いていく感じ。まるでRPGで新しい装備を手に入れた感覚です(笑)。
最近はどんどんひとりで生きていけるような個別主義の時代になっていますが、人といること、コミュニケーションがあることで救われることってたくさんあると思うんです。お互いは別の個体だけど、共感できるポイントを見つけることで、ぐっと共有領域が広がっていく。その接点のきっかけを作ることこそが、自分のプロダクトの目的なんだと思います。