interview

Vol.02

肌にゆっくりふれるとき、
いろんなことに気づいていく

カラフルなシャツとハットは、光島さんのトレードマーク。

冗談混じりで話しながらも、

核心をついてくる言葉ひとつひとつにドキッとします。

光島さんにとって、肌にふれることはなんでしょう。

美術家・鍼灸師の光島貴之さんにお話をお伺いしました。

takayuki mitsushima

1954年京都生まれ、在住。10歳頃に失明。大谷大学文学部哲学科を卒業後、鍼灸院開業。鍼灸を生業としながら、1992年より粘土造形を、1995年より製図用ラインテープとカッティングシートを用いた「さわる作品」の制作を始める。他作家とコラボレーションした「触覚連画」の制作や、2012年より「触覚コラージュ」「釘シリーズ」といった新たな表現手法を探求している。2020年1月、ギャラリー兼自身の制作アトリエとなる「アトリエみつしま」を立ち上げる。バリアへの新しいアプローチを実践する拠点となることを目指して、活動の幅を広げている。

手を広げるとき。指のさきで確かめるとき。

ぼくは、全盲の美術家であり、鍼灸師です。10歳ごろに視力を失いました。ぼくにとって肌にふれたり、物にふれたりするのは、目で視るということに近いかもしれません。さわり方にも色々あって、例えば物の全体像をつかむときは手のひらで広く、大きく、動かします。細かいことを知りたいときは指先で少しずつふれていきます。片手だけで確かめるということは、ほとんどありませんね。だいたい両手で、包み込むようにしたり、撫でたり、物の縁にそわせていったり。さわって知ることは時間がかかると思います。でも、そうして、ゆっくり知っていくんです。ちなみに、ぼくにとったら、道も皮膚と同じです。地面を杖の先で滑らせながら、肌ざわり(道)を確かめていきます。荒れた土地は、肌荒れのようにざらついていて、滑らかな土地はきめ細やかに杖が滑っていきます。

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肌からその人が伝わってくる。

鍼灸師の仕事をしていると、いろんな状態の人がやってきます。お話しを聴くことももちろんありますが、傾聴するという感じでしょうか。お話しに集中するよりかは、どちらかというと、肌にふれて、その人の状態を診ていきます。この部分の肌が緊張しているな、強張っているな、荒れているな、と少しずつその人のことがわかってきます。治療をして、肌がやわらかい弾力性のある感じになってくるころに、患者さんの声色も変わってくるんですよね。和らいでいるなぁと、ぼくもホッとします。最近気づいたんですが、治療が終わる頃にはぼくも力が抜けてゆったりした状態になっているんです。よい状態になっていく人にふれるからでしょうか。わからないんですけどね。

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ふれることで、何を感じる?

ぼくたちは「さわることのできる」作品を作り、長野県立美術館や東京都現代美術館や自身のアトリエみつしまで展示をしています。ひとりで作るのではなく、いまはチームで共同制作という形をとっているので、ぼくたちは、と言っています。また、さわることを軸にしたワークショップやひとつの作品を一緒にみる対話鑑賞をすることも企画しています。目隠しをした状態でぼくの作品にふれてもらうことも企画していますが、最初は何がなんだかわからないということが多いんです。だからこそ、ゆっくり時間をかけて、ふれていってほしいなと思っています。素材と素材のあいだのすきまや、連なる釘の表面からみなさん何を感じるんでしょうね。気になります。

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