ぼくは、全盲の美術家であり、鍼灸師です。10歳ごろに視力を失いました。ぼくにとって肌にふれたり、物にふれたりするのは、目で視るということに近いかもしれません。さわり方にも色々あって、例えば物の全体像をつかむときは手のひらで広く、大きく、動かします。細かいことを知りたいときは指先で少しずつふれていきます。片手だけで確かめるということは、ほとんどありませんね。だいたい両手で、包み込むようにしたり、撫でたり、物の縁にそわせていったり。さわって知ることは時間がかかると思います。でも、そうして、ゆっくり知っていくんです。ちなみに、ぼくにとったら、道も皮膚と同じです。地面を杖の先で滑らせながら、肌ざわり(道)を確かめていきます。荒れた土地は、肌荒れのようにざらついていて、滑らかな土地はきめ細やかに杖が滑っていきます。