今月から大学が始まるので、ロンドンに戻ってきた。というのも今年の春に3ヶ月ほど語学留学していたので、これが2回目のイギリス移住となる。スーツケースふたつに入る可能な限りの荷物を日本から持ち込む、という流れは同じだが、今回は詰め込むものがまるで異なった。たとえば下記のような感じである。
2024年3月の荷物
・使い捨てカイロなど防寒具
・薬や化粧品各種
・衣料品
2024年9月の荷物
・器やポット
・文庫本各種
・役割のない愛しいもの
はじめての移住の際にはとにかく必須の、明確な役割のあるものを賢明に詰め込んだ。しかしいざ生活が始まると、引越し先に既にある趣味ではないつるりと光る器が心踊らないとか、kindleでは補えないフィジカルな本の手触りとか、そして何より役割こそないが愛しいものがふと視界に映ることの重大さとか、そんなことを痛感した。薬も防寒具も服もロンドンで買えるけど、これまで少しずつ蒐集した愛しいあれこれは、この街には売っていないのだ。
「役割のない愛しいもの」のひとつがこのイッタラの梟の置物で、そういえば会社員の頃からずっとデスクに置いていた。「無人島に何持ってく?」的なる問いがあるけれど、「移住時のスーツケース2つに何を詰め込むか」というのは、人生で不可欠なものを自問せざるを得ないハードな選別作業みたいなところがある。
無用の長物とはよく言うが、役割のないものというのは、明確な役割がないからこそ代替不可能なのである。一年の中で二度の移住を経て、肌身離さずそばにおきたいものの存在を確かめた。