毎日のスキンケア ―健康な肌を維持するために― 毎日のスキンケア ―健康な肌を維持するために―

日常生活でおこる、
肌への負担

「汚れを落とす」という毎日の習慣は、肌にとって大切な機能を低下させるリスクを抱えています。

こんなことが肌への負担に こんなことが肌への負担に

肌は、毎日の生活のなかでたくさんのストレスに晒されています。
洗顔をしたあと、入浴後など、化粧水を使わないと肌が乾燥してしまうという経験はないでしょうか。汚れを除去することはトラブルを防ぐ上で大切ですが、洗い過ぎもまた、肌の負担になっていることがあります。

コットンでメイクをふき取る、タオルで汗をふくなど、肌の汚れをふき取ることも、ゴシゴシと力を入れてしまえば負担の一因に。

「汚れを落とす」という毎日の習慣は、実は、「バリア機能」という、肌にとって大切な機能を低下させるリスクを抱えています。汚れを落としたあとの肌には、化粧水をきちんと使うなど、バリア機能を維持するためのスキンケアが大切です。

「バリア機能」が低下すると

うるおいを保つことができず乾燥したり、外からの刺激(汗、ほこり、細菌など)を受けやすくなることで、炎症を起したり、炎症のため色が黒ずんだり、かゆみがでたりするなど、肌にストレスを与える原因になります。

まずは「バリア機能」を整えることが重要なんだね まずは「バリア機能」を整えることが重要なんだね

健康な素肌
―バリア機能とは―

バリア機能をつくる、2つの仕組み

肌はどのようにして、バリア機能を維持しているのでしょうか。その仕組みは、2つの構造によって成り立っています。

角質層+皮脂膜 角質層+皮脂膜

もっと詳しく もっと詳しく

角質層

肌は、多くの層からできており 、根元(基底層)で新しい細胞が生まれ、外側に向かって古い細胞が送り出されて常に新しい皮フを作っています。これを、ターンオーバーといいます。

「角質層」は、最後に「垢(あか)」として剥がれ落ちる一歩手前の状態です。細胞がびっしりコンクリートのように並んでいて、細胞自身もうるおいを蓄え皮フにうるおいを与える力があります。さらにその隙間は細胞間脂質というラメラ構造があり、水分を保持することができます。

ラメラ構造では、サンドイッチのように水を挟みこんで逃がしません。

角質層はわずか0.02mmほどの厚さですが、とても重要な働きがあるんだね 角質層はわずか0.02mmほどの厚さですが、とても重要な働きがあるんだね

皮脂膜

もうひとつは、「皮脂膜」。肌を守る、天然のオイルです。「皮脂膜」は、皮脂腺から分泌される皮脂でできたもので、肌の表面を薄く覆っています。

角質層の上からフタをしているような状態で、肌内部の水分を逃がさず、外の刺激からも肌を保護しています。脂肪酸、ワックスエステル、スクアレンなどの油分からできており、洗顔やクレンジング、熱めのお湯などで流れ落ちやすいので注意が必要です。

また、思春期に分泌量が増えてニキビなどの原因になりますが、逆に大人になると徐々に分泌量が減っていくため、乾燥の原因にもなります。

乳液やクリームなどで皮脂膜の働きを補うことが大切だね 乳液やクリームなどで皮脂膜の働きを補うことが大切だね

バリア機能が正常な肌

バリア機能が正常な肌 バリア機能が正常な肌

毎日のスキンケアから、
はじめる

「健康で、うるおいのある素肌」

それは、毎日のスキンケアから生まれます。バリア機能を整えておくことが、とても大切です。

  1. 1.バリア機能を高める

    バリア機能が低下していると、うるおいはどんどん逃げてしまいます。

    • ヘパリン類似物質 ラメラ構造を整える
    • セラミド ラメラ構造の主成分

    など、角質層のバリア機能に着目した、さまざまな成分がスキンケアに利用されています。

  2. 2.うるおいを逃さない

    うるおいを逃がさないためには、「皮脂膜」のような機能に着目することが重要です。

    • ワセリン 皮膚科診療で保護剤として利用されている
    • スクワラン 皮脂の構成成分

    などの成分が入っているスキンケアを選ぶとよいでしょう。

  3. 3.炎症をおこさない

    炎症をおこしてしまうと、創傷(きずあと)や色素沈着(黒ずみ)などにつながることもあります。

    • グリチルリチン酸
      ジカリウム
      肌の炎症をおさえる
    • アラントイン 肌の炎症をおさえる

    などの成分がスキンケアに利用されています。

  4. 「化粧水」、「クリーム」などいつものスキンケアを見直してみましょう。 「化粧水」、「クリーム」などいつものスキンケアを見直してみましょう。

日常生活で
気をつけること

肌のバリア機能は、とてもデリケートです。
特に、入浴や洗顔などのときにはバリア機能を低下させない洗い方を心がけると、よいでしょう。

  • 洗浄力の強い
    石けんは避けましょう

    もっと詳しく もっと詳しく

    アルカリ石けんなどの洗浄力の強いものは、肌の大事な油分や水分をうばって、さらに乾燥させます。
    弱酸性の、肌にやさしい洗浄剤を選ぶとよいでしょう。

  • ゴシゴシ洗いは
    禁物です

    もっと詳しく もっと詳しく

    肌のバリア機能を壊し、乾燥の原因になります。ゴシゴシしなくても汚れは落ちます。
    手や泡立てネットなどで石けんを泡立て、やさしく洗いましょう。

  • お湯の温度は
    低めにしましょう

    もっと詳しく もっと詳しく

    使っているお湯の温度が高すぎることも、バリア機能を低下させてしまう原因の1つです。
    体温くらいの温度(38~40℃)が目安です。

  • 洗ったあとは、
    すぐにスキンケアを

    もっと詳しく もっと詳しく

    洗い終わったあとの肌は、どんどん乾燥していきます。すぐに保湿することを心がけましょう。

お薬 (治療)とスキンケア (予防)
どちらも大切です

お薬 (治療)

乾燥によって、かゆみがある、炎症を起こしているなどの、症状が出ているときは、きちんと治療することが必要です。
専門の医師に相談し、治療しましょう。

スキンケア(予防)

炎症を起こすと、黒ずんだり、かゆみが出てしまいます。一旦、黒ずんでしまうと簡単には元に戻りません。そうなる前に、毎日のスキンケアで予防することが大切です。

特に顔は、刺激を受けやすいところですので、化粧水でしっかり保湿する必要があります。その上で、身体の乾燥しているところを同時に保湿するとよいでしょう。

日常のスキンケアには、皮フのバリア機能を改善する保湿力の高いものを選ぶとよいでしょう。

保湿力の高いものは、顔だけではなく、全身に使うとよいでしょう。(症状のある時:化粧水、お薬。症状のないとき:化粧水) 保湿力の高いものは、顔だけではなく、全身に使うとよいでしょう。(症状のある時:化粧水、お薬。症状のないとき:化粧水)

※ご紹介した内容は、セルフケアを行ううえでのアドバイスです。
症状がなかなか良くならない場合は、すぐに皮膚科専門医、または薬剤師に相談し、適切な治療を受けるようにしてください。

[監修] 東京大学大学院 医学系研究科・医学部 皮膚科学 教授

佐藤 伸一 先生

経歴

医学博士。平成元年東京大学医学部医学科卒業。
平成6年に米国デューク大学免疫学教室に留学後、平成9年より金沢大学医学部付属病院皮膚科講師、平成16年より長崎大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚病態学教授を経て、平成21年より現職。
日本皮膚科学会理事・専門医、アジア皮膚科学会理事、日本研究皮膚科学会前理事長など、要職を兼務している。