2022年5月18日 更新

排卵日の基本を解説

  • 適切な排卵日
  • ホルモン
  • 基礎体温

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医療法人 絹谷産婦人科 院長 絹谷 正之 先生

医療法人 絹谷産婦人科 院長 絹谷 正之 先生

監修

医療法人 絹谷産婦人科 院長
絹谷 正之 先生

愛媛大学医学部卒業後、広島大学医学部産科婦人科、山王病院リプロダクションセンターを経て、カナダ、アメリカ、イギリスで高度生殖補助医療を学ぶ。2002年に絹谷産婦人科院長に就任。日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医、日本生殖医学会認定生殖医療専門医。

<知っておきたい>「排卵日」の正しい知識
1.排卵日の基本を解説

女性の身体には、妊娠、出産をするための大切な機能が備わっています。とくに妊娠を希望している人にとって排卵日は、妊娠するために大切な日と言えるでしょう。私たちの体内で起こる排卵がどんな仕組みで、いつ起こっているのか、知っているようでなかなかわからないものです。そこで、今回は排卵日と妊娠の関係について詳しく説明します。

排卵とは?

排卵とは?

妊娠を希望する人にとってはとても大切な日と言える「排卵日」。まずは、排卵の意味、月経との関係について解説していきます。

用語解説

排卵とは、卵巣の中で18~20mmほどに育った卵胞に、“排卵しなさい”という脳からの命令ホルモン「黄体化ホルモン」が大量に分泌され、約40時間以内に卵胞の壁が破れて、卵子が腹腔内に飛び出す状態です。この排卵が起こる日を排卵日と言います。ちなみに、この時の卵子の直径は0.1mmほどで、肉眼で白い点としてようやく見える程度の大きさです。

月経との関係

女性の排卵は、月経から次の月経までの間に1度あります。個人差はありますが、平均的な周期は25~38日で、その周期の中間くらいで排卵が行われます。妊娠しないと、黄体は排卵後およそ10日で変性し始め、子宮内膜を維持してきたホルモンが減少し、排卵後約2週間で内膜がはがれて「月経」となります。

排卵日の時期について

排卵日の時期について

排卵日を知るためには、まずは基礎体温を測って自分の身体のリズムを知りましょう。体温計は婦人体温計を使い、朝、目が覚めたらすぐ寝たまま測りましょう。同じ時間帯に測ることがベストですが、神経質になりすぎず、まずは起き上がる前に測ることを目標にしてみるといいでしょう。あまり気にし過ぎてストレスになるのは禁物です。基礎体温を表にしてみることで、月経周期や排卵の有無、ホルモンの状態など、おおよそのことが分かります。

個人差はありますが、通常は月経開始から2週間ほどは低温期、その最後にガクンと下がると高温期に移行して、2週間ほど続きます。妊娠するとそのまま高温期が続きますが、妊娠できなかった場合は下がり始め、不要になった子宮内膜が排泄される「月経」が起こります。ここで一旦リセットされて、次の妊娠に向けての準備がまた始まるのです。

かつては、ガクンと下がる日に排卵が起こると考えられていましたが、必ずしもそうでないことが分かってきました。この日から上昇に転じた2~3日の間に、排卵が起こったと考えるといいでしょう。

理想的な基礎体温

基礎体温表は、低温期と高温期がくっきりと二相に分かれているのが理想です。低温相のみで高温相が見られない場合は無排卵周期症が疑われ、高温期が10日以下と短い場合は、黄体機能不全と診断されます。ただし、きちんと二相に分かれていても排卵のない人もいますので、一応の目安と考えるといいでしょう。

基礎体温表でおおよその身体のリズムをつかんだら、排卵日を予想してみましょう。基礎体温だけだと排卵後に「このあたりでそうだったのだ」と分かることがほとんどです。「透明なおりもの」である頸管粘液(けいかんねんえき)を観察してみることをおすすめします。頸管粘液は、卵胞ホルモン(エストロゲン)の働きによって周期的に量や濃度が変化します。排卵日近くになると、生卵の白身のように粘り気のあるおりものが大量にでるようになります。指にとってみると10㎝以上も糸を引くようになり、これが排卵間近のサインです。この状態が3日以上続き、もっとも量が多くなった約2日後に排卵が起こります。排卵日にはおりものの量が減ることが多いようです。

このように基礎体温表と頸管粘液を併用すると、排卵日を予測しやすくなります。さらに薬局等で購入できる排卵日予測検査薬を使うと、もっと手軽に、排卵日を約1日前に予測することができます。

排卵の仕組み

排卵の仕組み

卵巣から約1か月に1回、通常は1個の卵子が排卵されます。月経の時に脳の視床下部から脳下垂体に命令がでて、“成熟卵胞を作りましょう”と卵胞刺激ホルモン(FSH)を分泌し、卵巣内の卵胞に働きかけます。刺激された卵胞は発育し、やがて卵胞ホルモンであるエストロゲンを分泌します。このホルモンによって子宮内膜は厚くなるのです。

卵胞が成熟しエストロゲンの分泌が十分になると、脳下垂体から黄体化ホルモンがでて“排卵しなさい”という指示がでます。すると卵胞の膜が破裂し、中の卵子は卵巣の外に排出され、「排卵」します。

排卵された卵子は卵管に取り込まれ、精子と出会った卵子は「受精」し、受精卵となって内膜が増した子宮へと送られ着床します。精子と出会わなければ、受精卵が着床しやすいように厚くなっていた子宮内膜がはがれ、月経がはじまります。

女性の一生のうちに排卵される卵子は、排卵がある時期を30~40年としても、だいたい数百個。残りの大部分の卵は排卵されずに消失していることになります。
50歳前後になると排卵のために用意される卵子が枯渇し、排卵や月経がストップします。これが閉経です。

月経とホルモンのメカニズム

ホルモンの産生の指令を出すのが視床下部です。視床下部はいわば、ホルモンのコントロールセンターとなっています。その視床下部には自律神経の中枢もあるため、自律神経のコントロールがくずれると視床下部が影響を受け、ホルモンバランスの乱れにつながることもあります。心や身体にストレスを受けると月経リズムがくずれやすいのには、こうした理由があるからなのです。

妊娠との関係

妊娠との関係

排卵によって卵巣から飛び出した卵子は、卵管の先にあるイソギンチャクのような卵管采(らんかんさい)に取り込まれ、卵管膨大部で精子の到着を待ちます。数々の試練を乗り越えてきた精子が卵子と出会い、受精するのです。そして受精卵は細胞分裂を繰り返しながら、受精後6~7日後に子宮内膜に着床し、妊娠に至ります。

妊娠を望んだ場合、自分の排卵日の予測がつくと、「いざ!」と意気込む人が多いことでしょう。しかしながら、排卵日だけが妊娠可能というわけではないのです。

実は精子は女性の体内で約2~3日は生きています。一方、卵子が受精できるのは12~24時間程度です。よって、排卵日の4~5日前でもタイミングを合わせれば妊娠の可能性があるのです。また、頸管粘液は排卵日の2~3日前にピークに達するので、もっとも妊娠する確率が高いのは、頸管粘液がさらさらとした状態になって、精子の生存率も高い、「排卵日の2日前」と言われています。このことから排卵日3日前~排卵日後の約5日間が最も妊娠しやすいと言えるでしょう。

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