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近畿地方の中でも特に京都府や滋賀県では、「目」+「いぼ」が語源だと考えられる「めいぼ」の使用が多く確認されます。テレビ等のメディアが普及するずっと以前、この「めいぼ」が地伝いに伝播していく過程で、東海地方の岐阜県・愛知県では「めんぼ」が生まれ、三重県や中国・四国地方(広島県・香川県等)では省略形の「めぼ」が生まれたもの考えられます。
「めんぼ(membo)」は、「めいぼ(meibo)」が周辺地域の東海エリアに伝播する過程で、下線部の「m」と「b」という唇音(両唇を閉じる音)に挟まれた非唇音の「i」が唇音の「m」に同化して生まれたものと考えます。「唇音(me)+非唇音(i)+唇音(b)」の連鎖より「唇音(me)+唇音(m)+唇音(b)」の連鎖の方が発音負担は軽いと考えられるからです。このような前後の音の特徴(この場合は唇音)に同化する現象は発音負担を軽減するためによく確認できる現象です。
これに対して三重県の全世代、広島県・山口県の多数、また鳥取県でも少数確認される「めぼ(mebo)」は京都・滋賀の「めいぼ(meibo)」から「i」が脱落して生まれたものと考えられます。
また、愛知県では特に世代が若くなるほど「めんぼう(membou)」を使う人が増えています。これは「めんぼ(membo)」が愛知県内で高年層から若年層にかけて受け継がれる際に、本来の語源である「メ(目)+イボ」から離れ「めいぼ」の症状に視覚的に類似した「メン(綿)+ボウ(棒)」又は「メノ(目の)+ボウ(棒)」を推測したことで生まれた語形であるといえるのではないでしょうか(高知県でも同様な過程を確認できます)。以上の地理的伝播と世代間の伝承過程を図式化すると以下のようになります。
四国エリアにも、中国や東海エリアと同様、かつて政治・経済の中心地であった京都生まれの「メ(目)+イボ」が語源の「めいぼ」が伝播したいえるでしょう。
徳島における「めいぼ」が圧倒的に多く使用されている点や愛媛における「めぼ」より「めいぼ」の方が多く使用されている点、又香川では愛媛と逆に「めいぼ」より「めぼ」の方が多く使用されている点については3県共に世代を問わず約50年前に国立国語研究所で行われた調査の結果と同様です。一方約50年前の調査と異なった結果を確認できるのが高知県の状況です。
つまりかつての調査では高知県の山間部を中心として「めいぼ」の使用が確認され、一方海岸部を中心に「めぼ」の使用が確認されました。それに対して今回の調査では「めいぼ」の使用は世代を問わず少数で、代わってかつての調査では報告のない「めぼう」が全世代で多数使用されていることを確認できます。この語末を延ばす「めぼう」に似た語形を使用している地点としては愛知県の若年層における「めんぼう」の使用を確認できます。ここで愛知県と高知県という京都を中心とするほぼ地理的な同心円上の地点で、語末の長音化という共通の現象が確認された背景には、そこに至るまでの両地域共通のプロセスを想定できます。この点を言い換えると、特に共に語末を延ばすに至った点について以下のような愛知県と高知県共通の地理的伝播と世代間の伝承プロセスを想定できます。
まず上図の地理的伝播過程においては愛知と高知で違う過程が確認されます。しかし語源の「目+イボ」から離れ「目いぼ」の視覚的な症状に類似した「メン(綿)+ボウ(棒)」又は「メ(目の)+ボウ(棒)」という語を生み出し、その結果語末が延びることになったという世代間の伝承過程においては、愛知、高知間で共通したプロセスを想定できます。
また、高知では全世代で新形の「めぼう」が多数使用されているという点については、高知ではこの50年位で伝統形の「めぼ」から語末の長い「めぼう」への変化がほぼ終わってしまったといえそうです。これに対して愛知県では世代が若くなるにつれ、新形の語末が長い「めんぼう」の使用が増えているので、今正に伝統形の「めんぼ」から「めんぼう」への変化が進行している最中だと考えられます。
さらに「めいぼ」は、九州においては2カ所のルートから伝播してきたといえそうです。一つ目のルートは京都から瀬戸内海沿岸を経て九州北部(現在の福岡北九州地区周辺)に伝播してきたルートです。また二つ目のルートは京都から徳島・高知・愛媛の四国内陸部を経て大分県の日豊海岸沿岸周辺に上陸し宮崎県の日向灘沿岸周辺に伝播したルートです。
このように地域語形の分布をたどると、昔(いつかは特定が難しいですが)の人の移動ルートも確認できて興味深いです。また「ことば」だけではなく他の文化等についても一緒に伝わったことが予想されます。
ここで今回の調査結果に話を移すと福岡・大分では世代が若くなるにつれ、共通語形「ものもらい」の使用が増え、20代以降では両県共に「ものもらい」の使用が地域語形の「めいぼ」の使用を上回る結果が確認できます。一方宮崎県では全世代において「めいぼ」の使用が最も多く確認され福岡・大分と対照的な結果を示しています。いずれにしても約50年前の段階でも九州内では上記の地域のみで確認されていた少数派の使用であったため今後も「めいぼ」の使用地域が九州内で拡大されていく可能性は低いように思われます。
抗菌目薬
ものもらい・結膜炎の治療に。効き目をとどめる機能型目薬。
方言研究の見地から
「めいぼ」系について
近畿地方の中でも特に京都府や滋賀県では、「目」+「いぼ」が語源だと考えられる「めいぼ」の使用が多く確認されます。テレビ等のメディアが普及するずっと以前、この「めいぼ」が地伝いに伝播していく過程で、東海地方の岐阜県・愛知県では「めんぼ」が生まれ、三重県や中国・四国地方(広島県・香川県等)では省略形の「めぼ」が生まれたもの考えられます。
「めんぼ(membo)」は、「めいぼ(meibo)」が周辺地域の東海エリアに伝播する過程で、下線部の「m」と「b」という唇音(両唇を閉じる音)に挟まれた非唇音の「i」が唇音の「m」に同化して生まれたものと考えます。「唇音(me)+非唇音(i)+唇音(b)」の連鎖より「唇音(me)+唇音(m)+唇音(b)」の連鎖の方が発音負担は軽いと考えられるからです。このような前後の音の特徴(この場合は唇音)に同化する現象は発音負担を軽減するためによく確認できる現象です。
これに対して三重県の全世代、広島県・山口県の多数、また鳥取県でも少数確認される「めぼ(mebo)」は京都・滋賀の「めいぼ(meibo)」から「i」が脱落して生まれたものと考えられます。
また、愛知県では特に世代が若くなるほど「めんぼう(membou)」を使う人が増えています。これは「めんぼ(membo)」が愛知県内で高年層から若年層にかけて受け継がれる際に、本来の語源である「メ(目)+イボ」から離れ「めいぼ」の症状に視覚的に類似した「メン(綿)+ボウ(棒)」又は「メノ(目の)+ボウ(棒)」を推測したことで生まれた語形であるといえるのではないでしょうか(高知県でも同様な過程を確認できます)。以上の地理的伝播と世代間の伝承過程を図式化すると以下のようになります。
四国エリアにも、中国や東海エリアと同様、かつて政治・経済の中心地であった京都生まれの「メ(目)+イボ」が語源の「めいぼ」が伝播したいえるでしょう。
徳島における「めいぼ」が圧倒的に多く使用されている点や愛媛における「めぼ」より「めいぼ」の方が多く使用されている点、又香川では愛媛と逆に「めいぼ」より「めぼ」の方が多く使用されている点については3県共に世代を問わず約50年前に国立国語研究所で行われた調査の結果と同様です。一方約50年前の調査と異なった結果を確認できるのが高知県の状況です。
つまりかつての調査では高知県の山間部を中心として「めいぼ」の使用が確認され、一方海岸部を中心に「めぼ」の使用が確認されました。それに対して今回の調査では「めいぼ」の使用は世代を問わず少数で、代わってかつての調査では報告のない「めぼう」が全世代で多数使用されていることを確認できます。この語末を延ばす「めぼう」に似た語形を使用している地点としては愛知県の若年層における「めんぼう」の使用を確認できます。ここで愛知県と高知県という京都を中心とするほぼ地理的な同心円上の地点で、語末の長音化という共通の現象が確認された背景には、そこに至るまでの両地域共通のプロセスを想定できます。この点を言い換えると、特に共に語末を延ばすに至った点について以下のような愛知県と高知県共通の地理的伝播と世代間の伝承プロセスを想定できます。
まず上図の地理的伝播過程においては愛知と高知で違う過程が確認されます。しかし語源の「目+イボ」から離れ「目いぼ」の視覚的な症状に類似した「メン(綿)+ボウ(棒)」又は「メ(目の)+ボウ(棒)」という語を生み出し、その結果語末が延びることになったという世代間の伝承過程においては、愛知、高知間で共通したプロセスを想定できます。
また、高知では全世代で新形の「めぼう」が多数使用されているという点については、高知ではこの50年位で伝統形の「めぼ」から語末の長い「めぼう」への変化がほぼ終わってしまったといえそうです。これに対して愛知県では世代が若くなるにつれ、新形の語末が長い「めんぼう」の使用が増えているので、今正に伝統形の「めんぼ」から「めんぼう」への変化が進行している最中だと考えられます。
さらに「めいぼ」は、九州においては2カ所のルートから伝播してきたといえそうです。一つ目のルートは京都から瀬戸内海沿岸を経て九州北部(現在の福岡北九州地区周辺)に伝播してきたルートです。また二つ目のルートは京都から徳島・高知・愛媛の四国内陸部を経て大分県の日豊海岸沿岸周辺に上陸し宮崎県の日向灘沿岸周辺に伝播したルートです。
このように地域語形の分布をたどると、昔(いつかは特定が難しいですが)の人の移動ルートも確認できて興味深いです。また「ことば」だけではなく他の文化等についても一緒に伝わったことが予想されます。
ここで今回の調査結果に話を移すと福岡・大分では世代が若くなるにつれ、共通語形「ものもらい」の使用が増え、20代以降では両県共に「ものもらい」の使用が地域語形の「めいぼ」の使用を上回る結果が確認できます。一方宮崎県では全世代において「めいぼ」の使用が最も多く確認され福岡・大分と対照的な結果を示しています。いずれにしても約50年前の段階でも九州内では上記の地域のみで確認されていた少数派の使用であったため今後も「めいぼ」の使用地域が九州内で拡大されていく可能性は低いように思われます。