<知っておきたい>「しもやけ(凍瘡)」の正しい知識 (1)「しもやけ(凍瘡)」の原因・症状を解説 しもやけ(凍瘡)について しもやけ(凍瘡)の原因・仕組み しもやけ(凍瘡)の主な症状 寒くなってくると手足などにできるしもやけ。何が原因で、どんな症状が出るのか、しもやけに似た症状があらわれる他の疾患にはどんなものがあるのかについて、皮膚科専門医の監修のもと、詳しく解説します。 しもやけ(凍瘡)について 寒さにより身体の末端部に症状がみられるしもやけ(凍瘡)。まずは、しもやけ(凍瘡)について用語解説していきます。 しもやけ(凍瘡)とは しもやけは医学的には凍瘡(とうそう)といいます。手足の指先や耳たぶなどが赤色~赤紫色に腫れ、かゆみがあって患部を押すと少し痛みを感じる場合もあります。寒さにさらされることで血管が収縮し、血流が悪化することで起きる病気です。 凍傷との違い 冬山登山などで起きることがある凍傷(とうしょう)は、氷点下の環境にさらされることによって手足の指先など末端の血流が悪化した上、皮膚組織が凍って破壊され、場合によっては壊死(えし)に至ったり、体温の低下によって全身の血流が滞って低体温症になったりする状態のことです。凍傷が氷点下の環境で起こるのに対して、しもやけ(凍瘡)は平均気温4℃~5℃といったプラスの気温で起こります。 ひび・あかぎれとの違い ひびやあかぎれも乾燥した冬場、指先に起こる症状ですが、これは乾燥や水仕事などによって皮脂が失われることが原因の進行性指掌角皮症という湿疹のことで、しもやけ(凍瘡)とは違うものです。 しもやけ(凍瘡)の原因・仕組み しもやけ(凍瘡)は、平均気温4~5℃で1日の気温差が10℃前後という環境で発症しやすくなります。そのため、真冬よりも1日の寒暖差が大きい初冬や冬の終わりに発症しやすく、温暖な地域に住んでいても発症します。近年は家屋の気密性が高くなり、暖房で室内全体が温まるようになっているため、患者数は減っていますが、それでも学童期の小児に多く、水仕事が多い女性などでは大人になっても繰り返すことがあります。 寒さによって手足の指先などの血流が悪くなることが原因で、血流が悪くなった部分が腫れたり、うっ血(血の流れが滞ること)したり、ひどいときには水ぶくれができたりすることもあります。かゆみを伴い、患部が温まったときや入浴などでかゆみが増すことも特徴です。 ただ、発症には気温だけでなく、発汗や遺伝的な要因が大きく関わっており、明確な発症のメカニズムについては分かっていません。 しもやけ(凍瘡)の主な症状 しもやけ(凍瘡)は、患部の状態によって大きく2つのタイプに分けられ、患部全体が熟した柿のように腫れて色が赤紫色っぽくなる樽柿型(T型)と、赤く盛り上がって腫れる部分が複数発生する多型滲出性紅斑型(M型)という名前がついています。またT型とM型の中間のものもあります。 どの場合でもかゆみを伴い、「痛かゆい」と表現されることが多いです。症状がひどいと水ぶくれや潰瘍(皮膚が壊れてその部分が深くえぐれたようになる状態)になったり、潰瘍から細菌に感染してさらに悪化したりする場合もあります。 しもやけ(凍瘡)がよくみられる部位 しもやけ(凍瘡)は寒さにさらされやすい身体の末梢部でよく症状があらわれます。具体的には以下のような部分です。 手足の指先 耳たぶ 鼻の頭 頬 膝頭 肘から先(前腕部) しもやけ(凍瘡)に似た症状がみられる疾患 以下の疾患では、しもやけ(凍瘡)に似た症状がみられます。 全身性エリテマトーデス 若い女性に多い病気で、原因不明の自己免疫疾患(外敵から体を守る免疫システムが自分の体を攻撃してしまう病気)のひとつです。 手の平や足の裏、手足の指にしもやけ(凍瘡)に似た赤い腫れ(凍瘡様紅斑)ができ、寒さの刺激がきっかけで症状が出る場合もあるので、手足の皮膚症状だけではしもやけ(凍瘡)との区別がつかない場合があります。全身性エリテマトーデスの場合は顔に特徴的な紅斑(蝶形紅斑)ができることが多く、脱毛が生じたりすることもあります。皮膚症状だけでなく、腎臓、肺、消化管、脳など内臓にもいろいろな症状が出るため、しもやけ(凍瘡)の症状が強かったり、何度も繰り返したりする場合は一度皮膚科を受診し、血液検査などで詳しく調べてみることをおすすめします。 シェーグレン症候群 この病気も全身性エリテマトーデス同様、30~50代の女性に多い自己免疫疾患のひとつで、顔やひざ下(下肢)にしもやけ(凍瘡)のような症状がみられます。その他の特徴として、皮膚や眼球、口の中の乾燥といったものがあります。冬以外の時期にも症状が現れる場合は、詳しい検査を受けてみてください。 レイノー病、レイノー現象 寒さや精神的ストレスによって突然手足の指が青白くなり、その後赤や紫に変化する症状が現れます。しびれや痛みを伴うこともあり、若い女性に多く発症します。背景に別の病気があって症状が出る場合(レイノー現象)も、この病気だけ単独で発症する場合(レイノー病)もあります。 クリオグロブリン血症 クリオグロブリンというのは4℃で固まって、37℃で溶けるという異常なたんぱく質のことで、これが血液中で増加する状態をクリオグロブリン血症といいます。 寒い環境下で手足に紫色のあざのような症状(紫斑)や潰瘍、関節痛といった症状がみられ、全身の臓器が障害される症状もみられやすいです。骨髄腫などの疾患があって発症することも、原因不明で発症することもあります。 サルコイドーシス サルコイドーシスという病気では、皮膚のほか複数の臓器に症状が出る原因不明の病気です。皮膚に現れる症状はさまざまですが、びまん浸潤(しんじゅん)型というタイプではしもやけ(凍瘡)が発生しやすい鼻、頬、耳、手足の指などに、見た目もしもやけ(凍瘡)によく似た病変が現れます。そのため古くは凍瘡様狼瘡(とうそようろうそう)という名前でよばれていました。自覚症状がないことと、寒い季節以外にも発生するのがしもやけ(凍瘡)との違いです。 水虫 水虫とは俗称で、医学的には白癬(はくせん)という名前の感染症です。白癬菌という菌が足で繁殖した場合(足白癬)を一般的に水虫と称しています。足の裏や指と指の間が赤くなって小さな水ぶくれができ、皮がむけることもあります。靴の中が蒸れている状態が長時間続く環境などが原因となり、夏場に症状が悪化し、冬場は軽くなる特徴があります。 注意すべき基礎疾患 以下の疾患があると、しもやけ(凍瘡)が重症化しやすくなりますので、注意が必要です。 糖尿病 糖尿病では血管が狭くなったり詰まったりすることで手足の血流が悪くなっており、手足が冷たく、感覚が鈍くなります。さらに傷ができるとそこから感染を起こしたりして重症化しやすくなります。 閉塞性動脈硬化症 50歳以上の男性で発症しやすい病気です。足の血管が詰まって血流が悪くなることが原因で、足先が冷える、しびれるなどの症状が現れます。進行すると、歩いていても痛みを感じたり、組織が壊死(えし)して切断しなければならなくなったりします。背景に糖尿病や高血圧、脂質異常症、肥満などがある場合が多いです。 監修:秋葉原スキンクリニック院長 堀内 祐紀先生 東京女子医科大学医学部医学科卒業後、都内皮膚科・美容クリニックを経て、2007年に秋葉原スキンクリニックを開院。日本皮膚科学会認定専門医、日本医学脱毛学会理事、Aケア協会アドバイザー。日本皮膚科学会、日本美容皮膚科学会、日本レーザー医学会、日本抗加齢医学会などに所属。 正しい情報を掲載するよう注意しておりますが、 誤った情報があればご指摘ください 医療情報に関するご指摘はこちら からだの気になる症状別ガイド一覧へ戻る