火傷(やけど)の応急処置法・対処法

<知っておきたい>「火傷(やけど)」の正しい知識 (2)火傷(やけど)の応急処置法・対処法

火傷は、軽度のものを含めれば誰もが一度は経験したことがあるでしょう。そんな頻度の高いケガだからこそ、もしものときのために、応急処置を含めた対処法についてきちんと理解しておきたいものです。
そこでここでは、皮膚科医の監修のもと、火傷の応急処置法や予防法、火傷の跡のケア方法などについて詳しくご紹介します。

火傷(やけど)の応急処置法

火傷(やけど)の応急処置法

もし自分や家族が火傷を負ってしまったら、まずは速やかに適切な応急処置を行うことが重要です。また、患部の状態によっては、速やかに病院にかかる必要も。ここでは、火傷を負ったらすぐに行うべき対処と判断についてご紹介します。

火傷の応急処置法

火傷を負ったら、まずはとにかく冷やすことが重要です。水道水に患部を当て、15~30分ほど冷やしましょう。このとき、衣服は着たままで構いません。無理に衣服を脱ごうとすると、皮膚が衣服に張りついて、皮膚や水疱が破けてしまう原因に。水疱が破けると、痛みが増し、完治までにかかる時間も長くなってしまいます。また、衣服脱ぐのを優先して患部を冷やすのが遅れると、患部に熱が作用し続けてしまい、より深くまで損傷を負う可能性もあります。
なお、服の上からなら氷のうを使って冷やしても問題ありませんが、長時間当て続けると凍傷を引き起こす可能性があるので、注意が必要です。
患部を冷やした後は、水疱を破かないように清潔なガーゼやタオルを患部に当てて、病院を受診しましょう。自己判断で患部に薬を塗ってしまうと、治療に支障をきたすこともあるので、冷やす以外の処置はせずにおくのが正解です。
また、患部が腫れてくる可能性があるので、指輪などのアクセサリー類ははずしておくようにしてください。

低温火傷の場合は、受傷後1週間ほど経ってから症状が出てきます。そのため、一般的な火傷のように水道水で冷やすなどといった処置は行わず、速やかに病院にかかりましょう。低温火傷は重症化する傾向にあるため、必ず医師の治療を受けてください。

軽度の火傷でも病院にかかったほうが安心

火傷を負った範囲が狭く、かつ紅斑だけで水疱ができない場合は、火傷の深度はもっとも軽いI度に分類されます。I度熱傷は基本的に数日で治癒しますが、火傷の深度を素人が判断するのは難しいもの。見た目よりも深くに及んでいたり、適切な治療を受けなかったことで跡が残ったりすることもあります。軽度な火傷でも、念のため病院を受診するのがおすすめです。
なお、手足や顔、陰部に火傷を負った場合は、病院の中でも総合病院にかかるようにしてください。火傷の範囲が狭くても、入院を伴う治療が必要になる場合があります。

火傷の対処法

火傷の対処法

応急処置で熱の影響を食い止めたあとは、深度別に適切な対処を行いましょう。

  • I度熱傷の場合

    I度熱傷の場合は、応急処置後に特に治療を行う必要はありません。ただし、時間が経ってから水疱ができてくることもあるので(この場合はII度熱傷だったことになります)、経過観察は十分に行うようにしてください。病院で炎症を抑える軟膏を処方される場合もあります。

  • 浅達性II度熱傷

    II度熱傷では、小さな水疱はそのまま放置し、患部を適度に湿らせるために、融脂性基剤の外用薬を塗布。患部が乾かないように維持します。
    水疱が大きい場合は、内容物を吸引する処置をとります。感染の兆候があれば消毒も実施。その後、創傷被覆材や生体包帯を使用して患部を守ります。

  • 深達性II度熱傷

    II度熱傷の中でも真皮の深くまで損傷が見られる深達性II度熱傷の場合は、必要に応じて壊死組織の除去を行ったり、潰瘍の状況に合った創傷被覆材を使ったりした後、浅達性II度熱傷と同じ方法で治療します。
    なお、火傷の範囲が広い場合や患部が顔などの場合は、植皮手術を行うこともあります。

  • III度熱傷

    皮膚全層、およびそれ以上に熱のダメージを負うIII度熱傷では、外科処置が必要となるケースが多くあります。この場合、まずはデブリードマン(壊死した部分を除去する処置)を行い、体の一部から皮膚を切り取って植皮したり、範囲が広い場合にはメッシュやパッチを使って植皮したりといった処置を実施。なお、手術前は感染予防のために、状況に応じた外用薬や被覆材を外用します。植皮が必要ない場合は、軟膏などを使用して治療するのが一般的です。

重度のやけどでは上記の方法と合わせて、輸液を使った低容量性ショック回避や人工呼吸器を使った呼吸管理、感染対策などが必要に応じて行われます。

なお低温火傷の場合は、受傷してから1週間ほど経ってから皮膚に変化が生じます。壊死が起こる場合は組織を除去する処置を行い、状況に応じた軟膏を塗って、乾かないようにしながら上皮化するのを待ちます。

火傷の予防法

火傷の予防法

生活環境の見直し

火傷を予防するには、生活環境を見直すことが大切です。火傷の患者の多くは小さな子どもなので、例えば手の届くところに電気ケトルや炊飯器(コードも含む)を置かないこと。ケトルのお湯がこぼれて、または炊飯器の上記で火傷を負ってしまう例が少なからず確認されています。
また、グリルつきのコンロに触ってしまい、手や顔を火傷するケースもあるようです。

火傷を引き起こす危険があるものがどこにあるのか、またそれがどんな状態なのかを今一度確認してください。

低温火傷の予防

一般的な火傷と同じく注意が必要なのが、低温火傷です。
湯たんぽや電気あんか、電気毛布、カイロなどで長時間同じ箇所を温め続けると、低い温度(40~55度)でも火傷に至ります。これらを使うときは、温度や時間には十分に気をつけましょう。
目安としては、60℃なら約5秒、50℃なら約3分、44℃なら6~10時間熱を与え続けることて、低温火傷になるといわれています。

特に注意が必要なのは、皮膚の薄い子どもや高齢者、知覚麻痺のある方、糖尿病を患っている方などです。もちろん健康な成人でも、寝ている間は異変に気づきにくいため、気がついたら低温火傷になっていたということは十分にありえます。

火傷の跡のケア方法

火傷の跡のケア方法

火傷の傷跡を治すには、副腎皮質ホルモン含有の軟膏やクリーム、テープを使うと効果が見られます。また、ヘパリン類似物質(ヒルドイドなど)も火傷跡の改善に有効です。
改善のスピードはゆるやかですが、市販薬も販売されているので、必要な時には購入しやすいというメリットがあります。

皮膚の盛り上がり(ケロイド)に対しては、リザベン(トラニラスト)という内服薬を飲むと、皮膚の盛り上がりを抑えることが可能です。その他、弾力性のある包帯やサポーターで患部を押さえつけ、物理的に跡が盛り上がらないようにする方法もあります。

なお、顔などの目立つ位置に跡が残ってしまう場合は、植皮術や瘢痕形成術なといった外科的治療を受けるという選択肢もあります。
医師に相談し、効果やリスクをよく理解した上で選択しましょう。

これは正しい?火傷の対処やケアに関するQ&A

これは正しい?
火傷の対処やケアに関するQ&A

  • 火傷の応急処置に冷却スプレーは使える?

    火傷の応急処置として患部を冷やすことは重要ですが、冷却スプレーやジェルなどは用途が異なるため使えません。水道水などで冷やすようにしてください。

  • ラップで患部を覆うケアがいいって本当?

    ラップで患部を覆うケアは、感染のリスクがない状態、かつ健康的な肉芽が成長している状態では有効です。ただし、細菌感染のリスクがあるので、素人が自己判断で実践することはおすすめできません。必ず医療機関を受診し、医師の判断に従って行いましょう。

  • 火傷で皮膚がめくれたら消毒液を使うべき?

    傷口を衛生的に保つことは必要ですが、自己判断で消毒液を使うのは危険。傷を直す細胞にまでダメージを与え、治りが遅くなる可能性があります。火傷を負ったら、前述した適切な応急処置のみ施して、医師の治療を受けるようにしましょう。

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藤本 智子先生
監修:池袋西口ふくろう皮膚科クリニック院長 藤本智子先生
浜松医科大学医学部医学科を卒業後、東京医科歯科大学皮膚科に入局。その後同大学の助教、多摩南部地域病院、都立大塚病院の皮膚科医長を経て、池袋西口ふくろう皮膚科クリニックを開院。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。

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