長年「授かりたい」カップルをサポートしているロート製薬。ドゥーテスト®・hCG 妊娠検査薬、ドゥーテスト®LH 排卵日予測検査薬の研究・開発をする中、いまだ世の中に「妊娠の正しい知識が浸透していない」と感じることが多いそうです。そこで今回、社員自らより知識を深めるための「社内妊活セミナー」が開催されました。講師は後藤レディースクリニック(大阪・高槻)院長 後藤栄先生です。不妊の治療・研究のエキスパートならではの視点で「妊娠の神秘」を解説してくださいました。
後藤 栄(ごとう さかえ)
1988年滋賀医科大学卒業(滋賀医科大学付属病院産婦人科にて臨床研修)。
できるだけ自然な妊娠を目指す治療を行う一方、高度生殖医療の治療・研究も実施。
1999年二段階胚移植、2006年シート法(SEET法)を考案・開発。約25年にわたり不妊の治療・研究に携わる。
「妊娠は神秘的」そのワケは…?
診察でたくさんの患者さんとお会いします。そんな中「排卵日の性交が妊娠しやすい」「医療の進歩で高齢でも妊娠が望める」など、妊娠について認識が間違っている方が、いまだに多いと感じます。まずお伝えしたいのは、昔から言うように「赤ちゃんは授かりもの」で「妊娠は神秘的」ということです。それを前提に、これから妊娠の真実を詳しく紹介していきます。
「不妊」とは、日本産科婦人科学会によると『妊娠を望む健康な男女が、避妊をせず性交していても《1年間》妊娠しない状態』と規定されています。「たった1年で不妊?」と思う方も多いかもしれませんね。実際に、結婚後1年程経っても授からないことは、珍しくありません。
その訳は、妊娠のメカニズムにあります。自然妊娠が起こるには、排卵した卵子が卵管を通る間に、約1億匹いる精子のうち、たった1匹と受精し、子宮に着床する必要があります。(図参照)排卵〜着床までは5日程ですが、妊娠の可能性があるのは、排卵日の6日前〜排卵日1日後です。ちなみにこの間の性交で妊娠する確率は「29歳以下女性:30〜50%」。26歳をピークに緩やかに下降し、不妊状態のカップルの妊娠率は1周期あたり「約2%」と言われています。このデータから、妊娠がどれほど神秘的か実感いただけると思います。
近年、晩婚化が進み、高齢出産も増えています。40歳を超えて出産する芸能人や、「年の差婚」などが話題にされ「高齢になっても妊娠・出産できるんだ」と考えてしまう人は多いようです。しかし、現実的に妊娠できる確率は35歳を境に大きく低下し、40歳以降はさらに下がります。反して流産率は上昇し、卵子の染色体異常、精子の遺伝子異常の確率が高くなるのも見過ごせない事実です。
間違いがちな「妊娠しやすいタイミング」
『できるだけ早く授かりたい』と望む方で「排卵日を調べて、そのタイミングで性交する」という方法をとるカップルが多いようです。しかしそれは必ずしも効率的ではありません。ある論文によると、妊娠の可能性が最も高い性交のタイミングは「排卵日2日前」。次いで「排卵日前日」とあります。また、精子の寿命は約36〜48時間のため、排卵日の6日前から36〜48時間毎に性交すると、より妊娠率は高まります。理想は週3日程度の性交です。とはいえ、共働きや長時間労働で夫婦の時間が持ちにくい方は、少なくとも排卵日前後には、カップルで意識し合って時間をつくれると良いですね。
このようなタイミング法を試しても妊娠しない場合は、ぜひパートナーとクリニックを訪れてみてください。不妊の内容は様々で、男女半々に要因があると言われています。また、35歳を過ぎると妊娠率は低下しますので、35歳を超えて結婚された方は、クリニックの「ブライダルチェック」などで、早めの検査をしておくのも一つの方法です。誰しも「今日より若い日はない」ですから!
「不妊治療」で実際に行われる
検査とは?
クリニックでは、まず1ヶ月ほどで5〜6回の通院をして基礎検査をします。生理周期に合わせて排卵・卵管・子宮など何らかの問題がないか、性交後の頚管粘液中に元気な精子がどの程度いるのか調べる「フーナーテスト」、男性の精子を採取する検査など、様々な可能性を想定して検査します。そして結果をふまえ、カップルにとって最短かつ最小限の治療計画を立てていきます。
基礎検査後、従来の不妊治療では「タイミング治療」「人工授精」「体外・顕微受精」を順次、試みていく「ステップアップ方式」が主流でした。しかし出産の高齢化が進み(当院の初診年齢は37歳)はじめから体外受精を試みることも珍しくありません。ケースによっては、体外・顕微受精から戻って人工授精。また、いったん休んでタイミング治療など、必要に応じて排卵誘発剤やホルモン剤を併用しながら臨機応変に診療を進めていきます。
では、それぞれの治療法について詳しく解説していきましょう。
まず、「タイミング治療」は、排卵日前後に性交のタイミングを合わせる治療です。排卵誘発剤を使う場合は、1周期あたりの妊娠率がもともとの約2%から、4〜8%ほどになるとされています。ただしこれは若年女性のデータで、40歳を超えるとその効果は期待しづらくなります。もちろん例外もあるので、全く意味がない訳ではありません。
次に、「人工授精」は、男性の精子を容器に取り、元気な精子だけを直接子宮に注入する方法です。その後、受精から妊娠に至るまでは自然妊娠と変わらず、8〜10%程度の妊娠率になると言われています。
この2つが「一般不妊治療」と言われるものです。「思ったほど大幅に妊娠率は上がらないんだ…」と感じた方も多いかもしれませんね。やはり、初診年齢が上がるほど、何らかの不妊要因を抱えていることが多く見受けられます。そんなときは、後に紹介する「体外・顕微受精」をベースに治療を進めます。
「体外・顕微受精」は、男女から卵子と精子を採取し、体外で受精させる治療です。精子に問題がなければ、卵子を入れた容器の中に一定の濃度になるよう精子を加えて受精を行い(体外受精)、精子状態が良くない場合は顕微鏡下でニードル(ガラス針)を使って精子を卵子に注入し、受精を行います(顕微受精)。そして胚(受精卵)を胚盤胞の状態まで培養し、再び子宮内に移植します。その胚が無事に着床すれば、妊娠となります。
悩まず、気軽にクリニックへ
行ってみましょう
当院では2015年だけで484名の方が体外・顕微受精で妊娠を叶えています。「不妊治療は恥ずかしい」なんて思う方もいるかもしれませんが、1年に生まれる赤ちゃんのうち27人に1人が体外受精で生まれたといわれ、もはや珍しい存在ではありません。
また、いまだに「体外受精は高額な上になかなか妊娠しない」というイメージを持つ方もいらっしゃるようです。当院の初回体外受精による妊娠率は「29歳以下:75%」「30〜34歳:65.5%」「35〜39歳:46.5%」「40歳以上:14.3%」となっています。このデータから解るとおり、より早期に受診すれば確率はそう低くありません。
さらに「卵子を凍結保存する」という方法も。より若い卵子の方が妊娠率は高くなるので、採卵時に複数の卵子を採卵できれば、複数の胚を培養して凍結保存しておきます。例えば「34歳で採取した受精卵を使い、37歳で再び妊娠する」ことも可能に。凍結保存技術の進歩から、凍結融解胚移植のほうが妊娠率は上がるというデータもあります。
このように、私たちは「不妊に悩むカップルが1組でも多く授かれますように」と願いながら、日々治療にあたっています。もしも「いつか子供が欲しい」と思っているなら、たった今、不妊に悩んでいない方でも、1日でも早く、ぜひクリニックを訪ねてみてください。
—— 後藤先生によるセミナーの内容は、いかがでしたか?ロート製薬は、妊娠検査薬や排卵日予測検査薬を扱っている会社として、妊娠・妊活の正しい知識を発信し、「妊活」が「特別なこと」ではなく、「当たり前のこと」として広がるよう取り組んでいます。