<知っておきたい>「湿疹(皮膚炎)」の正しい知識 (1)湿疹(皮膚炎)の原因・仕組みを解説 湿疹(皮膚炎)について 湿疹(皮膚炎)の主な原因 湿疹(皮膚炎)の仕組み 湿疹(皮膚炎)と痒疹(ようしん)の違い 皮膚がかゆく、赤く炎症を起こしたり、肌にプツプツとできものができたりする症状は、多くの方が経験したことがあるかもしれません。しかし、その症状は「湿疹(皮膚炎)」とは限らないことをご存知でしたか。「湿疹」とは“かゆみ”を伴う表皮の炎症を言います。皮膚に炎症があっても、かゆくなければ湿疹ではないのです。多くの方が経験している「湿疹」についての正しい知識を、皮膚科医監修のもとご紹介します。 湿疹(皮膚炎)について 湿疹とは、皮膚の表面にかゆみを伴う炎症が起きる病気ですが、症状はさまざまです。かゆみとともに、皮膚が赤くなったり、小さくもり上がったり、小さな水ぶくれができたりなど、とても多様性があります。そして、その湿疹の原因もさまざまです。 湿疹(皮膚炎)の主な原因 湿疹は、さまざまな原因が考えられます。湿疹の原因は、外部からの刺激である外的要因と、体質などの身体内部から作用する内的要因に分けられますが、多くの場合、外的要因と内的要因が互いに影響し合い、最終的に湿疹につながっているため、原因を一つに特定できないこともあります。 外的要因 外部からの刺激による要因は、大きく3つあります。 全ての人がかぶれるもの(一次刺激性) 接触源そのものの毒性により炎症反応が起こり、誰でも発症しうるものです。例えば作用の強い酸やアルカリなど化学物質によるものが挙げられます。硫酸などに触ってしまったら誰でもかぶれてしまいます。 アレルギーの機序によるもの(アレルギー性) 接触物質によるアレルギー反応で炎症が生じます。例えば、漆(うるし)や、化粧品、金属によるもので、全ての人がアレルギー反応を起こすわけではありません。 金属アレルギーがある人では、アクセサリーなどだけではなく、虫歯治療で使われる銀歯や詰め物などの歯科金属を口に入れることでアレルギー反応を起こすこともあるので注意が必要です。 アトピー素因によるもの アトピー素因がある方が、ハウスダストやダニ、花粉などが原因で湿疹を発症します。 アトピー素因とは? アトピー素因とは本人または家族が、アレルギー性の病気(アレルギー性の喘息及び鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎など)を持っていることや、アレルギーと深い関係がある免疫物質「IgE抗体」を産生しやすい体質を持っていることを言います。「アレルギーを起こしやすい体質」であると考えられます。 内的要因 身体内部の要因は、主に3つあります。 年齢 乳幼児や小児、高齢者は皮膚の皮脂の分泌が少なく乾燥しやすい状態です。皮膚のバリア機能も低下しており、外部からの刺激に弱く、湿疹が起こりやすくなります。 アレルギー体質・アトピー素因 アレルギー性鼻炎や気管支喘息などのアレルギー体質がある場合や、本人にアトピー素因がある場合は湿疹が起こりやすくなります。 全身疾患 例えば、腎臓病や糖尿病などの全身疾患がある場合に湿疹が発症することがあります。この場合、皮膚の血行不全や皮膚の代謝不全が関与していると考えられています。 頻繁な手洗いで湿疹になる?? 感染症などの予防のために、手洗いやアルコール消毒などはとても大切ですが、その習慣により、湿疹に悩む方も多いようです。頻繁な手洗いや消毒を繰り返すことにより、皮膚のバリア機能が低下し、外部からの刺激に弱くなり刺激性接触皮膚炎などが発症しやすい環境にあります。感染症予防のために手洗いや消毒をした場合には、皮膚のバリア機能を守るためにも「保湿」することを心がけましょう。 湿疹(皮膚炎)の仕組み 湿疹が発症するには、さまざまな原因があります。その原因によって、どのようにして皮膚にかゆみや炎症などの症状が出るのか見ていきましょう。 皮膚が刺激を受ける、異物が触れる・異常が生じる(化学物質、物理的な刺激など) 体内の免疫機能が異物から防御しようとして、異物へ攻撃したり、過剰に反応してしまう。具体的には、免疫機能の重要な役割を持つリンパ球などの免疫細胞を呼び集めるために、ヒスタミンやプロスタグランジンなどのかゆみや炎症にかかわる化学伝達物質を放出する。 免疫機能が過剰に働きすぎると炎症反応が起こる。 炎症反応の例 ・かゆみ神経を刺激する→かゆみが生じる ・毛細血管が拡張する→赤みが生じる ・毛細血管の透過性が増え、血漿成分が漏れ出す→腫れる(ぶつぶつが出る) 白血球やリンパ球が化学伝達物質をさらに放出することで炎症反応が続く 湿疹(皮膚炎)と痒疹(ようしん)の違い 湿疹と痒疹は異なる疾患です。 痒疹は原因がはっきりわかっていないことも多いですが、湿疹を、掻き壊したり、長く放置したり、間違った処置をすることで「痒疹」になることもあります。 「痒疹」は、非常に強いかゆみを伴う孤立性の皮膚の隆起(丘疹)や小結節のことです。湿疹とは異なり、掻き壊すことなどにより他の発疹に移行しないのも特徴です。非常にかゆく、治りにくく、きちんと治療をしないと繰り返すようになるため、治療法も湿疹より強力なステロイド剤を使用したり、「ナローバンドUVB」と呼ばれる特別な波長の紫外線を照射する光線治療などを行います。 痒疹は(1)急性痒疹、(2)慢性痒疹、(3)特殊型の痒疹に分けられます。 急性痒疹 かつて小児ストロフルスとも呼ばれており、子どもに多く、虫刺されが引き金となって起こることがあります。虫刺されによる免疫の過敏反応や湿疹を掻き壊わすことで、急性痒疹になることがあり、非常に激しいかゆみが現れます。 慢性痒疹 中高年者の腰回りや太ももに紅色や褐色のボツボツとした丘疹ができる多形慢性痒疹などがあり、とにかくかゆく、治りにくいのが特徴です。 特殊型の痒疹 特殊型の妊娠性痒疹は、2回目以後の妊娠3~4か月頃に痒疹が現れます。しかし出産後には軽快します。 また、デルマドロームと言って、内臓の病変などの全身疾患に関連して発生する痒疹などもあり注意が必要です。白血病や悪性リンパ腫の可能性もあるため、きちんと皮膚科専門医で診てもらうことが必要です。 子供が蚊に刺された!なんでこんなに赤く腫れるの? 子供が蚊に刺された時、赤く大きく腫れてしまって驚いた経験はありませんか?蚊に刺された時、体内に入った蚊の唾液腺物質に対するアレルギー反応により湿疹は起こります。刺されてすぐにかゆく赤く腫れる「即時型反応」と、刺されてもすぐには反応なく、翌日にかゆく赤く腫れる「遅延型反応」があります。 個人差はありますが、一般的に乳幼児期には遅延型のみで、幼児期~青年期には即時型と遅延型の両者、青年期~壮年期には即時型のみが出現し、老年期になるといずれの反応も生じないとされています。 即時型のかゆみは刺されてすぐにかゆくなり、数時間程度でおさまるのに対し、遅延型のかゆみは刺されてからも1~2週間ぶり返します。子供が蚊に刺された時、いつまでもかゆく大きく腫れてしまうのには理由があるのです。 監修:尾見 徳弥先生 日本医科大学大学院卒業 Aarhus大学客員研究教授、日本医科大学客員教授。日本皮膚科学会美容皮膚科・レーザー指導専門医 日本皮膚科学会認定専門医 日本アレルギー学会認定専門医 正しい情報を掲載するよう注意しておりますが、誤った情報があればご指摘ください 医療情報に関するご指摘はこちら からだの気になる症状別ガイド一覧へ戻る